ロンドンで様々なノンネイティブ話者の英語を耳にしていると、母語の影響で /p, t, k/がほぼ帯気しない発音をする人が一定数おり、英語を処理しようとする脳の構えでは /b, d, g/に聞こえて理解が難しくなることが度々あります。
例えば昨日だと、イギリスの通貨単位 £: pound [pʰaʊnd]が、帯気を伴わない [p]で発音された結果どうにも bound [baʊnd]に聞こえてしまって、簡単なやりとりのはずが暫く「なんのこっちゃ?」となってしまいました。
これは日本語で自然に「パ・タ・カ行」を発音しても同じことが起こり、ネイティブの多数派の英語変種の発音で考えると /b, d, g/っぽく聞こえる可能性が高くなります。
よって英語学習者がまず身につけるべきは、帯気を伴う [pʰ, tʰ, kʰ]…イメージ的には「pハー、tハー、kハー」のような発音であることは間違いないのですが、いわゆる国際コミュニケーションのための英語ということを考えると、言ってみれば折り返し地点からまた戻ってくるような力が必要になると感じています。要は、一般的に通じやすい英語発音を身につけた上で、更にその音が他にどのような感じで聞こえてくる可能性があるか?というところまでカバーできるようになると、リスニングで拾える幅が少しずつ広がっていきます。
正直なところ、ロンドン留学生活の中で「なぜこんなに聞き取れないんだろう?」と思った時もありますが、それはリスニング力が「足りていない」のではなく、処理の幅が広がっていくプロセスの渦中にいるからなのだ、ということに、留学の最終盤になって気が付くことができました。
もっとも、聞き返す・言い換える・文脈やジェスチャーなども駆使する…などなど、最終的に相互理解が得られれば何でも良いとする開き直りも実際大切ですけれどね。