Sunday 28 January 2018

地元の恥

3割がTOEIC得点足りず卒業危機 道教育大函館校の対象4年生(北海道新聞)

大学生の英語力を測定するのに TOEICが妥当か?ということはあるにしても、合格基準は 640点(国際協働グループ)か 480点(地域政策グループ・地域環境科学グループ)である。いやしくも「大学を卒業した=学を修めた」というのなら、クリアして然るべき基準に過ぎない。

学生本人たちの努力・学習姿勢もさることながら、ガリレオが本当に問題視しているのは、大半が中学・高校の6年間+大学でも数年間は英語の授業を受けていながら、TOEICというモノサシで測った時に(百歩譲って 640点はさておくとしても)480点レベルの英語力をつけさせるに至っていないのか?というところ。それができないのならば、そこまでの英語教育は全て失敗と言わざるを得ない。

■ 「何が何でも達成させる」という気概はあったのか?

記事によれば、「今年3月に初めてTOEICの合格ラインを超えた卒業生を送り出す」とのことなのだが、もし合格基準を卒業要件に設定しただけで、達成に向けての取り組みを学生に丸投げしていたのだとすれば、いくら大学が自主的な学びの場であると言っても、あまりにも杜撰である。

大学として、「我が校を卒業するということは、かくなる力を身につけていることなり」と定める以上、その設定した能力を学生が身につけられるように鍛え上げる義務があるとガリレオは考える。

単純な知識の伝達であればスマホ1つでも事が済む現在、ヒドゥン・カリキュラムとしての校風・気風の存在が、学校に行って学ぶことの大きな意義であると言えるだろう。灘や開成はどうして東大合格者を多数排出し続けられるのか?…長年培ってきた「東大を目指す空気感」が学校内に漂っているに違いないし、これが生徒に与える影響は想像以上に甚大である。翻って、道教大函館校の地域協働専攻の中には、「TOEIC 480点ないし 640点を取るのが当然」という空気感が生まれていたのだろうか、非常に疑わしい。

■ 筋を通すべし

「同校は急きょ、2月に補講と追試を行うことを決めた。この追試で合格点に達しなければ、卒業できない。」とのことで、“一応は”ギリギリ筋を通したと言える対応ではある。

ただ、実際に大学での TOEIC講座を担当した経験から感じることだが、いわゆる TOEIC対策がスコアに反映されやすいのは 640点のような中級レベルを目指す場合であり、480点突破を目指す場合には基礎から鍛え直す必要がある場合がほとんどであるため、週1~2回ペースでの授業だけで「取り繕う」のは厳しい。

補講と追試は一般的に「救済措置」と呼ばれるものであるが、本当の意味での救済とは、ただ「最後にワンチャンあり」にすることではない。石に噛りついてでも合格基準相当の英語力を身につけさせるべく、3月末まで徹底的に叩き込む。Feasibilityの問題があるのは当然だが、これこそが本質的に筋を通した対応であると思う。

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Friday 26 January 2018

英検:自己採点考

先週末、英検の第3回検定が行われました。受験された方、どうだったでしょうか?



…敢えて漠然とした問いかけをしてみたわけですが、実際に受験した自分の出来について、「どれだけ詳しく客観的な自己分析ができているか?」というところが、結果に関わらず非常に重要な事である。

というのも世の中には、いつも漫然と受験しては「今回は(比較的)良かった・出来が悪かった」などと場当たり的なことしか言えず、結局は"英検協会のお得意様"になっている人が沢山いるわけで…( ̄∀ ̄;)

今回の記事では、自己採点の結果、残念ながら合格ラインには届いていなさそう…という人を対象に、ガリレオ自身の過去の経験も踏まえ、着実に目標達成へと近づいて行くための学習方法を論じていきたい。

■ 自分の立ち位置と目標レベルの差

まず、今回の結果を踏まえて、素点ベースで良いので、各大問・Part毎に何問正解を目指すか明確にしよう。

例えば、ガリレオの英検1級受験時の正解数の推移は以下の通り:
(2010年度→2013年度→2014年度・いずれも第3回検定・2014年度に合格)

  • 語彙・熟語:11問→13問→18問 / 25
  • 読解(空所補充):4 → 6 → 5 / 6
  • 読解(内容一致):8 → 10 → 9 / 10
  • リスニング
    • Part 1:6 → 9 → 9 /10
    • Part 2:5 → 9 → 7 / 10
    • Part 3:2 → 2 → 4 / 5
    • Part 4:1 → 2 → 1 / 2
  • 作文:20 → 12 → 18 / 28

ガリレオの場合、まず読解は初回受験時から勝負できる手応えを感じていたので目標は9割。リスニングについては、全体として75%程度の正答率を目標とし、克服すべきは Part 3ということを意識していた。

一方、語彙問題については鬼門とは感じていたものの、単語集に頼るような勉強は違うと思っていたので、「15~16問取れれば御の字」くらいでいたら、自身の総合的な実力が高まるにつれて自然と正答率も上がっていった。

英作文は(昨年の IELTSでもやや苦戦したが)、自分の手応えと採点結果が(良い時も悪い時も)あまり整合しなかったので、ざっくりと「16点レベル以上のものが書けるように」という目標でいた。

実際に合格した 2014年度においては、満点を取れた partこそないものの(←ちょっと残念 ^^;)、それぞれ目標ラインにほぼ沿う形で得点できたことになる。

もっとも現在では CSEスコアによる採点・合否判定に変更されているため、より各技能でバランス良く得点する必要があるでしょうが、考え方・目標の立て方としては参考にしていただければ幸いです。

■ 己を知る

彼を知り己を知れば百戦殆うからず。彼を知らずして己を知るは一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば戦う毎に殆うし。

知彼知己、百戰不殆。不知彼而知己、一勝一負。不知彼不知己、毎戰必殆。
-孫子
有名な「彼(敵)を知り己を知れば…」の故事は、「百戦殆うからず」の先まで見ると、上のような内容となっている。

試験に置き換えて考えれば、「彼を知る」という部分は、それぞれの試験に応じた対策であり、受験前に行われるものが多くを占める。

一方、「己を知る」という方は、幸いにして試験で命を落とす危険性はほぼないので、受験後の自己採点のタイミングも大切な機会として活用したい。

とりわけ、高い目標級に初めて挑むような場合は、もちろん一発合格できれば言うことなしではあるが、「本番の空気の中で自分がどれほどの力を発揮できるのか?」というところは、実際に受験して初めて見えてくるものも多い。

孫子の教えに耳を傾ければ、己を知ることの重要性が特に強調されているのが感じられる。受験経験を今後に存分に活かすためにも、どの問題でどのくらいの差を埋めるのか?というところを明確にしていこう。

過去問や模試タイプの問題に取り組む際にも、細かいクリア目標を常々意識しておくことで、安定した結果を残すための指針が見えてくるはずです。

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Saturday 20 January 2018

センター試験 (2018 英語)を解いてみた:解答のポイント

今年度は、ガリレオが実際に全問を解いていく様子を動画にしました。
  • ガリレオはどのように本文内容を把握しているのか?
  • どこに注目して正解の選択肢を判別するのか?
  • どのようなペース・時間配分で解き進めていくのか?
…といったところを観察し、センター英語はもちろん、各種英語試験に挑む際の参考にしていただければ幸いです。


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設問ごとの解答のポイント

第1問

  • 秒殺せよ。
何度もブツブツ言いながら「どれだどれだ?」とやっていないだろうか?

試験開始直後で時間配分を気にする意識が向きにくい段階だからこそ、ここで時間を浪費してしまうと後がキツくなる。上の動画では 2分13秒で解き終えているように、サッサと先を急ごう。そのためにも、発音・アクセントに対して不断の学習意識が欠かせない。

また、スペリングと発音の関連については、一度集中的に学んでおくことを勧める。
(特に母音 → ガリレオ作成の資料をご参照ください。)

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第2問

  • 現場で使われているんだ!
例えば、A-問1 [8]で「安い」と言っても salaryのことを表すのに lowを選ばせたり、C-問2 [25]では「バスに乗っていたら道が混んでいて間に合わなかっただろう」という文脈の上で I wouldn't have taken the train without your suggestion.という文を完成させたりと、実際に英語を使う場面で適切な単語や文の選択ができる力を問うている印象を受けた。

この傾向は、大学入試改革が行われても変わらないだろう。しかるに、ただ一問一答式の文法・語法問題集を黙々とこなすだけの勉強では不十分であり、学んだ表現を自ら使いこなせる力にまで昇華させることを意識して学習することが重要となる。

今後、4技能型試験の導入により、文法・語法の力は writing / speakingによる評価の比重が高まっていくと考えられる。この意味でも、「安い = cheap」のようなバカ暗記ではなく、コミュニケーションの現場で実際に outputすることを見据えて学んでいこう。

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第3問

  • A: 抽象-具体はセット。
  • B: 全員が共通して言及しているキーワードを見逃すな!
A-問2 [28]は、For example, で導入されている具体例が 「トマトは果物の一種」という考えをサポートする内容であり、前文の内容とそぐわないというものであった。例示は主張とセットであり、よって必ず整合性が見られる。

それぞれの文をバラバラに見るのではなく(ましてや、一文ずつ訳して終わりにするのではなく)、「今読んでいる文は、パラグラフ全体・文章全体の中でどのような役割を果たしているのだろうか?と考えながら読み解いていく習慣をつけよう。

また B-[32]では、昨年に引き続いて「全員の意見に共通する要素」が問われた。本文を注意して読めば、異なる3つの立場の人(たち)の意見の中に audienceというキーワードが表れていることに気がつくであろう。来年も同じ傾向で出題される可能性があるので、意識しておくと良いかもしれない。

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第4問

  • A: グラフ表現は何かと必要。
  • B: 条件を満たすものを探しに行こう!
第4問Aの図表問題では、当然ながら「図表のデータ⇔英語表現」と相互変換できる力が重要になる。上で書いたこととも重なるが、例えばビジネス英語でも、売上高や市場シェアなどを図表化して説明する機会は日常茶飯事だろうし、実践での必要性が高い。

そのような背景もあってか、近年注目度が高まっている TEAPでも Readingの Part 2Aが丸々「図表の読み取り」であるし、IELTS (academic module)の Writingの Task 1でも図表の説明が課されている。

第4問Bは設問→文書の順となっており、情報を探して読むという感覚が強い。特に問2, 3のように、条件が指定され、それを満たすものを選ぶ問題では、文書中の複数箇所に散りばめられた情報を漏らさず統合して判断しなければならない。これは TOEICに酷似している。

余談ながら、センター英語では、ここで簡単な計算を要する問題が毎年1問ある。受験生はもっと難しい数学なども受ける人が多いだろうから心配には及ばなかろうが、ここでミスしないようにしよう。(流石に現役の時ではないが、大学時代にその年の問題を解いてみた際、繰り下がりの引き算ミスか何かで満点を逃したことがあります…^^;)

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第5問

  • Imagine!!
タコの宇宙人 (・o・)/ に惑わされた受験生も多かったようである。確かに SF色が強く、日誌に書かれている状況を具体的に想像するのが難しかったかもしれない。

ガリレオとしては、もし現役時代にこの問題が出されていたとしても、なにせ受験勉強の合間に Harry Potter and the Chamber of Secretsを読んでいたわけなので、日常あり得ない状況描写だろうとも恐るるに足らずであったことだろう( ̄∀ ̄) だからと言って「受験対策にハリポタを読め!」と勧めるわけではないが、物語文はイメージ化しながら読むと良い。

そのトレーニングには Ted-Edの動画がオススメ。リスニング学習でもよく生徒に勧めているのだが、読んだり聴いたりした英文の内容を、このアニメーションのような感覚で頭の中に描き出してみると良いだろう。Ted-Edならば English subtitleに困ることは殆ど無いだろうし、日本語字幕つきの動画も豊富に揃っている。

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第6問

  • 分割して統治せよ。
動画 57:34~をご覧いただければ、第6問では「望遠鏡・顕微鏡・カメラ・X線」のようにパラグラフごとで内容を整理しながら読み進めていることが観察できよう。

80分という試験時間との戦いの場では、無駄な読み直しを出来るだけ排することが勝利につながる。もちろん、読み直しが必要な場合もあるが、該当箇所を素早く見つけられることがタイムロスを防ぐ。

今回の動画では、本文をほぼ全て音読し、軽く解説を挟みながらであっても、1時間ちょっとで全問を解き終えている。時間配分に苦労している受験生も多いだろうし、ガリレオ自身も、現役の時には試行錯誤を繰り返した。

しかし、そこで「速読力をつけるには…?」と、スキミングだのスキャニングだのといった隙だらけの "リーディングストラテジー"や、あるいはお題目だけの "パラグラフリーディング"といったテクニックに走らなくとも、きちんと全文を読んだ上で余裕を持って解き終える実力は身につけられるということを肝に命じてほしい。

また、第1パラグラフを読み終えた時点で、天体望遠鏡や顕微鏡の具体例を自ら導き出している点(カメラや X線までは発想が及ばなかったが…)にも注目して頂きたい。

言語学関連の専門書や論文を読み漁る中で、自然と先に書いてある内容を予測するクセがついたわけですが、「考えながら主体的に読む」という模範を示せたかと自負している。

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センター試験を受験した皆様「お疲れ様でした」
…などという言葉をかけるつもりは無い。

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Wednesday 10 January 2018

「マジ卍」考

■ 音形あり、意味を求めず?

この週末、各地で成人式が行われたということで、TVでは猫も杓子も「マジ卍」な新成人が多数紹介されていました。

この「(マジ)卍」という流行語、ワケノワカランものとして「近頃の若ぇモンは…」と突っぱねるのは年寄りのすることだが、言語学者の立場から見るとなかなか興味深いものとしてガリレオは捉えている。

というのも、我々は普段、何らかの伝えたい意味が先に頭にあって、それを表現するためにことば(=音形)を探すものである。
  • 意味音形
このことは流行語でも変わらず、例えば「○○なう」にしても「激おこ」にしても、何を言わんとしているかは明白であろう。

しかし一方、「卍」は清々しいほどに意味不明である。"マンジ"という音形(および恐らく、「文字」とも異なる「記号」が SNS上で目を引くということ)が先立ち、意味の方はその場のノリでなんとな〜くやり過ごすのが「作法」なのではないかと感じるほど。

こちらの記事によれば、「最近では<最高! マジ卍>や<めんどくさすぎて卍>など、肯定的にも否定的にも使う。」とのことだが、そのように使える大きな理由としては
  • 意味 <--- 音形
のように、通常とは反対のことばの使い方がなされているからと考えられよう。

これはさしずめ、ルイス・キャロルのことば遊びの構造にも通じうる(cf. 安井泉. 2013.『英語で楽しむ英国ファンタジー』静山社. pp. 161-165)。

■ しかし、懸念も感じる

他方、教育者として、新成人たちの「マジ卍」に対する思考態度には心配になる。上で引用した記事には、以下のような記載もあった:
無料通信アプリ「LINE(ライン)」は女子高校生を描く動画を制作。「マジ卍!」に字幕で「信じられない!」との“訳語”をあてた。同社によると、動画を作ったプロデューサーが女子高校生たちに繰り返し意味を尋ねたが、「意味なんてない。卍は卍。あるのは感情だよ」などと返されたという。
下線太字はガリレオによる)
成人式の様子を紹介したTVのワイドショーでも、複数の番組でレポーターが「卍」の意味を尋ねていたが、反応は同じようなもの。

もちろん、この回答が感覚的には「正しい」とも言えるのだとは思う。しかし気になるのは、若者たち(と言うと年寄りくさいのだが…)が、自ら使っていることば(?)の意味を説明しよう・考えようとすらしないように見えるところにある。J. S. ミルの『大学教育について』(セント・アンドルーズ大学名誉学長就任講演)では、以下のようなことが述べられている:
われわれは、毎日目に触れるものの意味を問うというようなことをほとんどしません。それと同様に、われわれの耳もまた、いったんある語や句の音に馴染んでしまうと、その音が果たしてわれわれの心に明瞭な観念を伝達しているのだろうかという疑問を抱かなくなります。そして、われわれが、その観念を明確に規定しようとするとき、あるいはその音声によって理解していると思っていることを他の語句で表現しようとするとき、非常な困難に直面することすら思いもよらないのです。
(J.S.ミル著、竹内一誠訳. 2011.『大学教育について』岩波文庫. p.34)
端的な例としては、昨年の Brexitの国民投票や、Trump政権の誕生であろう。果たしてどれだけの有権者が、自らの一票を投じるにあたり、Brexit"Make America Great Again"の表す意味を明確に規定していたと胸を張って言えるであろうか?

「マジ卍」のようなことばを、"ノリで"使って楽しむことは全く悪いことではない。しかし、一国の進むべき道は "ノリで"選ぶべきではない。然るべきときに慎重な思考・判断を行うためには、普段なにげなく使っている「ことば」に対して、立ち止まって考える習慣を身につけておくことが重要であるとガリレオは考える。

★Here is the Path to Wonderland☆

最後の文、「普段なにげなく使っている『ことば』に対して、立ち止まって考える習慣を身につけておくことがマジ卍」って書きたかったんだけどね ( ̄∀ ̄)

 


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Friday 5 January 2018

英語学習Q-A: テキストの予習はどのようにやれば良いですか?

年末年始の帰省にあたり、大学院時代の恩師である安井泉先生が訳・注をされた『対訳・注解 不思議の国のアリス』を実家まで持ってきて読み進めています。

Chapter VIII THE QUEEN'S CROQUET GROUND(第8章 女王さまのクロッケー場)にて、以下のような英文に出会い、ガリレオの "読解センサー"が「ピコーン♪」と反応しました:
"How are you getting on?" said the Car, as soon as there was mouth enough for it to speak with.
「調子はどうだい」とチェシャネコは、しゃべるために十分なだけ口が現れるなり、ことばを発しました。
(pp. 198-199, 太字下線はガリレオによる)
ここで、mouth無冠詞・単数形で用いられている事に注目されたい。英文法の中で、このような形で現れうるのは、waterや breadといった物質名詞。したがって、ここでは mouthが普通の「口」を表す(=可算名詞)意味から離れ、下線部で示したように「ことばをしゃべるために十分な量の口」というように物質的に捉えられている。

Alice par John Tenniel 24.png
画像は Wikimedia Commonsより
チェシャネコ (the Cheshire-Cat)といえば、「ネコなしのニヤニヤ (a grin without a cat)」のようにニヤニヤ笑いを浮かべた口だけを残すなど、自在に姿を表したり消したりすることのできる神出鬼没なキャラクターである。

このような物語上の状況に基づいて、上の場面では「ことばを発するための器官」として現れる口の「量」を問題にしていることになる。

■ 予習とは「知恵比べ」である

当然ながら、この物質名詞 mouthに関しては安井先生も脚注にて解説を加えられていたわけですが、ページ下部の脚注に視線が到達する前に同じポイントに反応できたというところで、ガリレオとしては嬉しくなるのです(*´ω`*)

同じようなことは、院生時代に安井先生がご担当の学類生向けの一般英語の授業に TA (Teaching Assistant)として参加した際にもあった。その授業のテキストは Mary Poppinsであり、ガリレオも予習の上で聴講させて頂きました。

予習の際、自らに課していたのは、先生が授業中の解説で取り上げるであろうポイントをあぶり出し、解説の切り口を予測しておくというもの。文法・語法の解説について言えば、当時からまずまず接近できていた自負はあるものの、英国文化や作品の社会的背景の面など、常に予習の上を行く知識が与えられる授業は圧巻でした。

よく「読書は筆者との対話である」ということが言われるが、思うに英語講読演習タイプの授業に臨む予習のあり方とは、師と筆者による知的対話に自分がどこまで迫れるか?…という知恵比べなのではないだろうか。冒頭の mouthの例のように、師と同じポイントに同じタイミングで反応できることが増えればそれが学習上の進歩であるし、教師の立場から言えば、生徒がどこまで予習してこようが追い付かせないような、知的対話の深淵を範として示さねばならぬ。

もっとも昨今の英語教育界においては、テキストの精読という活動が教室から消え去り、もはや風前の灯火と成り果てている。よって、上で述べてきた「英語の予習かくあるべし」というのも、そもそもの授業スタイルと合致する場面は少ないかもしれない。

しかし、"コミュニケーション"の場で本当の意味で使いこなせる英語表現とは、自ら深く思考を巡らし「腑に落ちた」もの。例えば mustと have to, 過去形と現在完了形など、理解していなければ、いくら「間違いを恐れずに、なんとなくでも伝われば良いんです!」などとノーテンキ精神論でハゲまされたところで、どうしても迷いが生じるものなのである。この「腑に落ちた英語表現」を積み重ねるには、精読×量が欠かせない。

それにあたり、テキストに潜む「お宝」をごっそりと掘り起こして見せてくれる案内人に出会えるのは貴重なことである。ガリレオ自身、安井泉先生に少しでも追いつき、いつの日かこの高くそびえ立つ壁を超えてみせるべく、新年早々に改めて学者/教師として襟を正す機会となった読書体験であった。

★Here is the Path to Wonderland☆

「決定的な例文探し」も、今回の不思議の国への旅の目的のひとつ。
ルイス・キャロルの織りなす頭と心に残る至極の英語表現と、それを支える英文法・語法や英国文化のカラクリを、今年のレッスンの中で折に触れて紹介していきたいと思っています。ぜひお楽しみに♪




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