Tuesday 15 September 2015

Recommendのすゝめ

前回の記事suggestの用法を recommendと比較して説明しましたが、Cafetalkの講師コラムの方で、そこで挙げた "recommend 人 to do"という語法が不自然なのではないかという質問をいただきました。
良い機会なので改めて文献およびコーパス調査を行い、元埼玉大学の助教授(当時)のイギリス人ネイティヴ・英語学ゼミの師匠・および友人の英語話者に確認を取ったので、新たな記事として今回は recommendの用法に焦点を当てて見ていきたいと思います。

*元記事での recommendに関する記述は、以下に述べるような追加説明を要するため、混乱を避けるために削除・修正してあります。ご了承ください。

■ "recommend 人 to do"は「不自然」なのか?

結論から言えば、recommendが後ろに "人 + to do"を取る用法というのは確実に存在し、文法的です。(ちなみにイギリス英語での用法だそうです)
しかし文法性」と「自然さ」は区別されるべきで、 質問者が疑問に感じた通り、ネイティヴなら使わない・極めて不自然に感じる場合があるとのことでした。

まず、質問者が提示してくださった以下の例文は、私も直観的に「そうは言わないだろう」と思いましたが、実際にネイティヴに聞いてみても "not incorrect, but [...] it does sound a little unnatural" / "very weird"という判断でした:
I recommend you to read this book.
「あなたにこの本(を読むこと)を勧める」ということを言いたければ、より自然な表現は
You should read this book.
I (would) (really) recommend this book.
I suggest/recommend (that) you read this book.
といったものになるとのことです。

一方で、Hirohitoが OALDで見つけた wouldを伴った以下の用例に対するネイティヴの判断は、"completely correct and natural" / "it feels natural for me to put ‘would’ or ‘that’"というものでした:
We'd recommend you to book your flight early.
「フライトを早めにご予約されることをお勧めします。」
この wouldは仮定法で「心的距離」を表し、結果として控えめ・丁寧な提案となっています。このような場合であれば、"recommend 人 to do"の形も容認されるようです。

■ 学習者への指針

では、例えば "I would recommend you to do something"という形で覚えれば良いか?というと、それは英語学習者に対しては「勧め」られないのが実際のところです。
1つには、大学時代の英語学ゼミの先生がコーパスで調べてくださった情報によると、
イギリス英語のコーパスには例が少ないながらも出ては来ます。が、イギリス英語話者にも使うべきでないという人もいるようですね。アメリカ英語のほうでは [...] recommendの後ろがthat節で原形を使うというのが多いようです。問題の形はあまり使用を勧めない方が無難ではあるでしょう。(太字・下線は Hirohitoによる)
とのことであり、使用頻度の面から見てもあまり一般的ではないということが挙げられます。

上と関連して、同じ内容を表すのに、より一般的な  "recommend (that) S V ~"という形が使えるのだから、こちらを優先して覚えたほうが良い、ということがあります。(ちなみにVが原形になるという部分は、それだけでまた1つ記事が書けるほどの内容になるため、今回は説明を省略します。)

★(まずは)以下の形で使いこなせるようにしよう!★
I recommend (that) you read this book.
We'd recommend (that) you book your flight early.
**この意味では、前回の記事で suggestの比較対象に持ってくるべきだったのは、 recommendではなく adviseであったということになります(修正済)。


■ 【補足①】recommendの用法を語源から再検討

今回の件に関する別な視点として、"easiest rule"は「recommend + 名詞」なのでは?というコメントをくれたネイティヴもおり、この点は語源と絡めて説明すると面白いので、以下で見ていきます。

"recommend + 名詞"の例→ I recommend this book (to all my students).

改めて recommendの語源を示すと:
  • re-: 強意 + commend: 褒める・勧める→「大いに勧める」
よって「褒める対象」として最も典型的なのは、人や物といった、名詞で表されるものということになります。それをスタートに構文の拡張が起こり、「『〜すること』を勧める」という意味で動名詞が取れるようになり、更に「・・・が〜すること」という出来事・事象を勧めるために、"人 to do"や that節を伴うようになったと考えることができるでしょう:
I recommend this book (to all my students).
→「物」を褒める
He recommended reading the book (before seeing the movie).
→「〜すること」を褒める
I recommend (that) you read this book.
→「・・・が〜する」という事象を勧める


■ 【補足②】suggestの sarcastic(皮肉的)な用法

前回の記事に関して、「suggestの用法は sayと同じ」という表現も誤解を招きかねないので補足しておきます。
記事の意図としては、suggestは後ろに that節を取るということを強調するために、「用法が」sayと同じという言い方をしました。両者の「意味」は異なりますし、suggestと sayの用法が「すべて」一致するというわけではないので、注意してください。
今回情報をくれた先生の一人が「確かに suggest recommendや proposeよりもソフトな提案を表すが、『皮肉的」な意味で一般に辞書に載っている定義よりもずっと強い意味を表す用法がある」という例を教えてくださったので紹介します。
(教師が生徒に)I suggest that you come to class on time next week.
上の文が本当に意味していることは、"If you don't come on time then I will punish you."「来週は時間通りに授業に来るように。(もし遅れたら罰を与える)」ということ。よって前回の記事に書いた「suggestは慎ましい性格」という範疇にはとても収まらないような強い意図を伝える用法も(その先生いわく、かなり頻繁に使われるものとして)存在します。
裏を返せば、もともと「suggestは慎ましい性格」であるからこそ、あえてその単語を選択することによって、かえって強烈な皮肉をかます効果が現れる…とも考えられます。


★Here is the Path to Wonderland★

recommendは(suggest同様)that節を後ろに取る用法をまず覚えるべし!


Wednesday 9 September 2015

Suggestの用法は◯◯◯と同じ!

「〜を提案する」という意味の動詞である suggestは、日常よく使う単語のひとつだが、これを正しい語法で使える学習者は少ない。もっと言えば、使い方を誤解している人がかなり多いようである。

最近のレッスンで、短い期間で2人の生徒が suggestを間違った使い方で用いていたので指摘・解説をすることになったし、実を言うと私自身も、大学院時代くらいまでは、辞書で確認しないと安心して使えないということが何度もあった。

当記事では suggestの用法を正確に記憶するための打開策を紹介し、縁あって本物の英語教師 Hirohitoを知るに至った読者の方々には、もう二度と迷うことなく、正しい語法で使いこなせるようになっていただきたい

■Suggestの用法は◯◯◯と同じ!


日本人学習者にとって、suggestの用法を間違いやすい大きな理由は、「〜を提案する」という訳語に頼って記憶していることにある。

このことにより、"同じような"意味を表す(ように錯覚する)adviseなどの動詞の類推で、"advise人 to do"と同じように使ってしまいがちになる。

Suggestの正しい用法は、(幾つかパターンはあるが「人が〜することを提案する」の意味でまず頭に入れて欲しいのは)、
"suggest (to 人) that S + V ~" という語法である。
つまり、「誰々に提案する」という提案相手を導くために "to 人"を伴うことはあっても、提案内容は that節で表すのがポイント。

そしてこの語法パターンを記憶に残すためには、以下のことを頭に叩き込んでいただきたい:
★Suggestの用法は Sayと同じ!★

Sayがthat節を後ろに取る」ということは、大半の英語学習者にとって強固なイメージが確立されていることだと思う。
また、直接話法/間接話法を学んでいれば、"Tom said to me that he was sorry."のような例文も、なんとなく見覚えがあるのではないだろうか。
よって、多少乱暴だが「suggest = say」と覚えておくことで、間違った用法で使うことを防ぐ防波堤としては充分に機能する

■"suggest (to 人) that S V ~"が表す提案のニュアンスとは?


今回の内容で絶対に頭に残して欲しいことは 「Suggest = Say」なので、この先は余力のある人だけ進んでいただくので構いません。

次に疑問に思って欲しいことは、「同じ」提案系でありながら、なぜ一部の動詞は後ろに "人 to do"を取れて、suggestはそのパターンを取ることができないのか?ということ。これは、語源や細かい差異に光を当てることで浮かび上がってくる。*

まず語源を見ていくと、
suggest: sug-/sub-(下に)+ gest(運ぶ)→自分の考えを相手の思考の下に運ぶ

英英時点の定義では、
suggest: to put forward an idea or a plan for other people to think about

(参考:Oxford Advanced Learner's dictionary

以上のことから、suggestは「相手に考慮に入れてもらえるように自分の考えをそっと差し出す」程度の、かなり慎ましい性格の動詞なのである。

よって、判断については相手に委ね、「まず提案を述べてみる」という程度のニュアンスになる。その意味でもやはり sayに近い性質を持っていると言えるのである。

★Here is the Path to Wonderland★

  • Suggestの用法は Sayと同じ!
  • suggestは、相手に判断を委ねて「まず提案を述べてみる」という程度のニュアンス!

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