Saturday, 4 June 2016

【London ことば・文化探訪】#6 日本のスイカは英国の牡蠣

先日配信→録画アップロードを行った Live from London-extra は、内容盛りだくさんで全体としては約1時間半にも及んでしまいました (^^;

今回は、まず気軽に授業内容の美味しいところを視聴いただけるように、「ロンドン交通事情」について切り出した short movieを新たに公開しました!



■スイカは「チャージ」・Oyster"top up"

動画でも紹介している通り、今やロンドン生活には欠かせないと言えるアイテムが Oyster card です。その名の由来についての解説は動画をご覧いただくとして、本記事では Oyster card を使いこなすために、日本人にとって忘れてはならない注意点をシェアします。

その注意点とは、Oyster card は「チャージ」することが出来ないということ。

―もちろん、一度購入した後に何度も入金することは可能です(;^_^A
ただ重要なポイントはとして、英語表現として入金を charge と表現しても通じないのです。

日本語の「チャージ」に相当するイギリス英語は"top up" といって、「(量が減ったものを) 上まで満たす」イメージで記憶すると良いでしょう。

実際の使い方は次のようになります:
You can top up your Oyster card online.
「オイスターカードはオンラインで入金出来ます。」 
If you set up Auto top-up, your card is automatically topped up when you touch your Oyster card on a yellow card reader.
「Auto top-upを設定すれば、オイスターカードを黄色のカードリーダーにタッチした時に自動的に入金されます。」

Metaphorがつなぐ共通認識

Oyster card の入金に対して使うべき英単語は charge ではなく top up である…という点は、英語学習、さらには実際の英会話においても非常に重要なポイントといえます。

というのも、現地の人たちが当たり前のように 'top up Oyster card' と言っている中で、うっかり 'I'd like to charge my Oyster card.' などと言ってしまうと、いくら文法的に正しい英語であるとしても誤解を生んでしまうことでしょう。相手にとってみれば、「あえて普通とは異なる語を使っているということは、何か特別なことを望んでいるのではないか?」と、(実際には無駄な)想像をかき立ててしまうことになるからです。

実際の出入金が目には見えない Oyster card のような電子マネーにまつわる言語表現は、より具体的に知覚できる物事との類似性に基づく metaphor に頼らざるを得ない。その際に、どのようなものとの類似性に注目するかという部分は恣意的なものでしかなく、それぞれの言語を使うコミュニティーでの多数決によって決まる。

「チャージ」と言えば充電との類似性であるし、語源をさかのぼれば「荷を積む」という行為との類似性から意味が発展している。一方で top up は元来「容器に液体を満たす」ことに使われる言い方であり、イギリスの紅茶や pub 文化との結びつきが思い起こされる。

このように、metaphor は抽象的な概念をことばで表すときに欠かせない手立ての一つであるわけです。

■実際の top up 体験

さて、今回の London滞在では、一度だけ自分の Oyster cardを top up する経験をしました。

まぁまず自動券売機のような機械というのは unfriendly に作られている。特に観光客のようなよそ者には厳しい。その上、海外ではよくあることですが、お釣りでもらう紙幣というのは日本の感覚からすれば随分とクシャクシャになっていて、これまた券売機との相性が悪い。

なんとか画面の指示通りに「ここに紙幣を投入してください」まで首尾よく進むも、おっかなびっくり操作しているこちらの気持ちを見透かすかのように、そこに紙幣を差し込んでみてもウンともスンとも…(-_-; 日本では、まごついていると「お金を入れてください」などと余計に急かされてイライラするが、イギリスの券売機は無言でじっと待っている。

「何か間違えたか?」という思いも頭の片隅に、どうにか目の前の券売機が自分の差し出す紙幣を飲み込んでくれるように、向きや角度を変えてご機嫌を伺ってみる。

2分ほどは格闘しただろうか、ようやく無事に紙幣が投入され、topped up されたことになる。しかし、とかく異国では、くどいほど確認をしてみないと安心はできない。もう一度 Oyster cardを読み取らせて、たった今 top up したはずの残高を表示させてみる…大丈夫だ。

普段の生活では造作もないことが、土地が変わると何でも時間がかかる。もちろん大変ではあるが、毎日が新しい冒険となり、経験値を貯めて「ロンドンっ子レベル」を上げていくというのがまた醍醐味とも言えよう。ロンドンクエストは続く…次回は職業:魔法使いのスキルアップ記事になるかな?どうぞお楽しみに♪