■ Chapter 2 ガリレオ訳
Chapter 2, In which Pooh goes visiting and gets into a tight place
ここでは、プーがラビットの家におじゃましに行って、すっかりはまってしまうよ。
みんなには、ウィニー・ザ・プー、または、もっと簡単にプーって名前で知られているティディベアくんは、ある日、満足げに鼻歌を歌いながら、森の中を歩いていました。ちょうどその朝に、ちょっとした歌ができあがったんだ。鏡の前で、いつもの「ふとり体操」をしていたときにね。できるところまでグ〜ッと背伸びをながら、「チャ・ラッ・ラー、チャ・ラッ・ラー」、次に前にかがんで、つま先にタッチしようとして、「チャ・ラッ・ラー、チャ・ラッ…アッ、アイタッ…ター!」って、やってたんだよ。朝ごはんのあと、プーはひとりでなんどもなんども歌っていたから、もうすっかり覚えられたんだね。だから今、はじめから終わりまで、まちがえずにちゃんと歌っていたのさ。こんなふうにね:
「あぁ!」とプーは言いました。(ラム・タム・ティードゥー・ラム・タム♪)「もしぼくが、なにかのなにかをわかっているとしたらね、ここに穴があるのは、ラビットがいるってことだ。それで、ラビットは『おともだち』で、」って話し続けて、「おともだちってことは、『食べもの』とか『ぼくの歌をきいてくれる』とか、そういったことだよね。ラム・タム・タム・ティードゥー・ラム♪」
そうして、プーはしゃがんで、頭を穴の中につっこむと、呼びかけてみたんだ。
「誰かいますかぁ?」
急に「サッ彡」て音が穴の中から聞こえてきたんだけど、そのあとはシーンとなりました。
「『誰かいますかぁ?』って言ったんですけどぉ!」と、プーはとっても大きな声で聞いてみました。
「いないよ!」という声がして、そしてそれから、「そんなに大きな声で怒鳴らなくったっていいってもんだ。最初っから、ちゃあんと聞こえてるんだからな。」
「もう!」と声をあげてから、プーは「ほんとに、ここには、ぜんぜんだぁ〜れもいないんですかぁ?」って聞いてみた。
「だぁ〜れも。」
ウィニー・ザ・プーは、穴から頭を抜いて、しばらく考えてみてから、こんなふうに思ったんだ。「だれかがいるに決まってるよ。だって、だれかが『だぁ〜れも。』って言ったはずだもん。」だから、プーはまた頭を穴の中に入れて、「やぁ、ラビット、きみじゃないの?」って言ってみました。
「いいや」と、今度はまた違った感じの声で、ラビットが答えました。
「でも、ラビットの声だよね?」
「そうは思わんよ。」と、ラビットは答えます。「そんなつもりじゃないからな。」
「う〜ん」と、プーは言いました。
穴から頭を抜いて、プーはもう1回考えてみました。そして、また頭を戻して、
「えっと、じゃあ、すみませんけど、ラビットがどこにいるか、教えてくださいませんか?」
「友だちの、クマのプーに会いに出かけてったよ。大の親友でね…」
「だけど、ここにいるのが、ぼくですよ!」プーはとっても驚いて言いました。
「どんな『ぼく』なんだ?」
「クマのプーです。」
「それ、本当かい?」と、ラビットは、もっと驚いて言いました。
「ほんとに本当。」
「おぉ、えーっと、それなら、入ってこいよ。」
そんなわけで、プーは、よいしょ、こらしょ、どっこいしょ、と穴を通っていって、そして、やっとこさ中に入りました。
「本当に言った通りだったんだな。」ラビットは、プーを頭のてっぺんから足の先まで見回しながら、「まちがいなく、きみだ。よく来たな。」
「だれだと思ったの?」
「あぁ、いや、よくわからなかったんだがな。ただ、森がどんなとこか、知ってるだろ。だれでもかれでも、うちの中に招くってわけにもいかねぇんだ。気をつけなくっちゃな。何かちょっとつまむかい?」
プーは、いつも午前11時に何かつまむのが大好きだから、ラビットがお皿やらコップやら取り出してくれるのをみて、とっても嬉しくなったんだね。それで、ラビットに「パンにはハチミツ?コンデンスミルク?」って聞かれたときには、すっかり舞い上がって「両方!」って言っちゃったんだけど、いやしんぼだと思われないように、「あ、でも、パンなんかは、どうぞおかまいなく。」って付け足したってわけさ。そのあとは、長〜いことな〜んにも言わずに…しばらくしてからやっと、なんだかべとべとした声で鼻歌を歌いながら立ち上がると、ニコニコ顔でラビットとあくしゅをして、もう行かなくっちゃ、と告げました。
「もう帰るのかい?」と、ラビットは、いちおう礼儀として聞きました。
「えっと…もうちょっといられるんだけどね、もし、その…だから、もしもきみが…」と、プーは食べものを置いておくところの方をじぃ〜っと見ています。
「実を言うとだね、」とラビットは切り出しました。「こっちもちょうど出かけるとこだったんだ。」
「あぁ、そうなんだ。じゃあ、ぼくももう行くね。バイバイ。」
「おぅ、それじゃあな。もし、本当におかわりがいらないんなら。」
「あるの?」プーはすぐに尋ねました。
ラビットは、そこらじゅうのお皿のふたを全部はずして言いました。
「いいや、もうない。」
「そうだと思ったよ。」と言ってプーはうなずくと、「それじゃ、バイバイ。もういかなくっちゃ。」
こうして、プーは穴からはい出て行こうとしました。前足でぐいっとひっぱって、後ろ足でうんしょと押し出して、ちょっとすると、まず鼻先が外に出て…次に耳が出て…次に前足が…次に肩が…そしてー
「あっ、だめだ!」プーは声をあげました。「戻ったほうがいいかな。」
「あぁもう!」プーはまた声をあげました。「やっぱり進まなくっちゃ。」
「どっちもムリだぁ!」プーはまたまた声をあげました。「あぁ、助けて!まったくもう!」
さて、そのうちに、ラビットも散歩に出かけたくなったんだけど、表の穴はふさがっているものだから、裏穴から外に出て、プーの頭の方へとまわってきて、見てみました。
「おい、つまっちゃったのか?」
「え、ううん。」プーは、なんでもないよといった感じで答えました。「ちょっとひと休みして、考えごとをして、歌を歌ってるだけだよ。」
「ほら、前足かしてみな。」
クマのプーが前足を差し出すと、ラビットはよいしょよいしょとひっぱってみたんだけどね…
「もぅ!いたいってば!」プーは大きな声をあげました。
「要するにだ、」ラビットが言います。「つまっちまってるんだな。」
「それもこれも」プーは機嫌をそこねて不満をもらしました。「表の穴をもっと大きく作っておかないからだよ。」
「それもこれも」と、ラビットもピシャリと言い返します。「食べ過ぎたからだ。そう思ってたんだがな、言いたくはなかったってだけの話だよ。どっちかが食べ過ぎてるよな、って。しかも、それがこっちじゃないってことはわかってたんだ。」とたたみかけて、「まぁまぁ、ともかく、クリストファー・ロビンを連れてきてやるよ。」と言いました。
クリストファー・ロビンは森の反対側の端に住んでいてね、ラビットと一緒にやって来て、プーの前半分を見ると、「おばかなプー」って、とってもやさしい声で言ったものだから、みんな本当に安心したんだよね。
「こんなふうに思いはじめてたんだけどね、」と、プーはちょっとだけべそをかきながら言いました。「ラビットが、もう表の穴を使えなくなっちゃうんじゃないかって。そんなことになったら、いやだよぅ。」
「それは俺も嫌だなぁ。」ラビットも言いました。
「表の穴をまた使うって?もちろんまた使えるさ。」
「そいつはよかった。」
「ひっぱり出せないとなるとね、プー、押し戻すってことになっちゃうかもだよ。」
ラビットは、あれこれ考えている様子でひげのところをポリポリかくと、こんな意見を述べました。いったんプーが押し戻されてしまうと、それはつまり中に戻るってことで、いやもちろん、プーといられて自分ほど喜ぶやつは他にいないだろうけれども、そうは言っても、しぜんのおきてってもんがあって、木の中で暮らすものもいれば、土の中で暮らすものもいて、それでー
「つまり、もうずぅ〜っと出られないってこと?」プーが聞きます。
「いや、つまりな、せっかくここまでは出てきたんだからさ、ムダにするのも惜しいんじゃないかってことだよ。」
クリストファー・ロビンはうなずきました。
「じゃあ、やれることはたったひとつだね。プーがやせるのを待つしかないよ。」
「やせるのって、どれくらいかかる?」心配そうにプーが尋ねます。
「だいたい1週間くらいかなぁ。」
「でも1週間もここにいられないよ!」
「ここにいるのはできるでしょ、おばかさん。むずかしいのは、出すほうなんだから。」
「本を読んで聞かせてやるよ。」ラビットが面白がって言いました。「あと、雪にならなきゃいいけどな。」と付け足すと、「それとな、プー、おまえさん、うちの中のけっこうな場所を取っちまってるってわけでさーその、後ろ足のほう、タオル掛けに使わせてもらうわけにはいかないかなぁ?っていうのもさ、ほら、ちょうどそこにあって…何にも使ってないわけで…タオルでもかけられたら、けっこう便利なんじゃねぇかってな。」
「1週間!」と、プーはがっくりして声をもらしました。「ごはんは?」
「かわいそうだけど、ごはんは抜きだね。」クリストファー・ロビンが答えます。「早くやせるためだよ。でも、本なら読んであげるからさ。」
プーはため息をつこうとしたけれど、それもできないって気がついたんだ。それくらい、すっかりはまっていたからね。それで、ポロリ、と、涙がひとつぶこぼれ落ちたんだ。
「じゃあ、心のささえになる本を読んでくれる?進退窮まったクマを、勇気づけて、なぐさめてくれるような。」
こうして1週間のあいだ、クリストファー・ロビンは、そういった本を北のほうのプーに向かって読んであげて、それからラビットは、自分のせんたくものを南のほうのプーにかけて…そしてその真ん中で、プーはお腹がちょっとずつほっそりしていくのを感じました。ついに、1週間の終わりに、クリストファー・ロビンが「よし!」とかけ声をかけました。
まずクリストファー・ロビンがプーの両方の前足をつかんで、次にラビットがクリストファー・ロビンをつかんで、それからラビットの友達やら親戚やらがみんなでラビットをつかんで、みんなで「せーの!」でひっぱって…
それでも長いこと、プーは「あー!」って言うばかりで…
その次は「おー!」になって…
するとついに、とつぜん、プーが「ポンッ!」っていったんだ。ほらちょうど、ビンからコルクの栓が抜けたときみたいにね。
だから、クリストファー・ロビンやラビットやラビットの友達や親戚は、すってんころりん後ろにひっくり返っちゃって…その上に乗っかってきたのが、ウィニー・ザ・プーだったのさー抜けたんだね!
こうして、プーはみんなに「ありがとう」のおじぎをすると、得意げに歌いながら、森のお散歩の続きを始めました。そんなプーの後ろ姿をやさしい目で見つめながら、クリストファー・ロビンはつぶやきましたとさ。「おばかなプー」ってね。
チャ・ラッ・ラー、チャ・ラッ・ラー、さてと、プーは、この歌をひとりで歌って、「他のみんなは何をしているのかなぁ?」「他のだれかになれたら、どんな気分かなぁ?」なんて考えながら、楽しそうに歩いていたんだけど、とつぜん、砂の土手のところに出くわしたんだ。そして、その土手には、大きな穴が空いていたんだよ。
チャ・ラッ・ラー、チャ・ラッ・ラー、
ラム・タム・ティードゥー・ラム・タム。
ティードゥー・リィードゥー、ティードゥー・リィードゥー、
ティードゥー・リィードゥー、ティードゥー・リィードゥー、
ラム・タム・タム・ティードゥー・ラム。
「あぁ!」とプーは言いました。(ラム・タム・ティードゥー・ラム・タム♪)「もしぼくが、なにかのなにかをわかっているとしたらね、ここに穴があるのは、ラビットがいるってことだ。それで、ラビットは『おともだち』で、」って話し続けて、「おともだちってことは、『食べもの』とか『ぼくの歌をきいてくれる』とか、そういったことだよね。ラム・タム・タム・ティードゥー・ラム♪」
そうして、プーはしゃがんで、頭を穴の中につっこむと、呼びかけてみたんだ。
「誰かいますかぁ?」
急に「サッ彡」て音が穴の中から聞こえてきたんだけど、そのあとはシーンとなりました。
「『誰かいますかぁ?』って言ったんですけどぉ!」と、プーはとっても大きな声で聞いてみました。
「いないよ!」という声がして、そしてそれから、「そんなに大きな声で怒鳴らなくったっていいってもんだ。最初っから、ちゃあんと聞こえてるんだからな。」
「もう!」と声をあげてから、プーは「ほんとに、ここには、ぜんぜんだぁ〜れもいないんですかぁ?」って聞いてみた。
「だぁ〜れも。」
ウィニー・ザ・プーは、穴から頭を抜いて、しばらく考えてみてから、こんなふうに思ったんだ。「だれかがいるに決まってるよ。だって、だれかが『だぁ〜れも。』って言ったはずだもん。」だから、プーはまた頭を穴の中に入れて、「やぁ、ラビット、きみじゃないの?」って言ってみました。
「いいや」と、今度はまた違った感じの声で、ラビットが答えました。
「でも、ラビットの声だよね?」
「そうは思わんよ。」と、ラビットは答えます。「そんなつもりじゃないからな。」
「う〜ん」と、プーは言いました。
穴から頭を抜いて、プーはもう1回考えてみました。そして、また頭を戻して、
「えっと、じゃあ、すみませんけど、ラビットがどこにいるか、教えてくださいませんか?」
「友だちの、クマのプーに会いに出かけてったよ。大の親友でね…」
「だけど、ここにいるのが、ぼくですよ!」プーはとっても驚いて言いました。
「どんな『ぼく』なんだ?」
「クマのプーです。」
「それ、本当かい?」と、ラビットは、もっと驚いて言いました。
「ほんとに本当。」
「おぉ、えーっと、それなら、入ってこいよ。」
そんなわけで、プーは、よいしょ、こらしょ、どっこいしょ、と穴を通っていって、そして、やっとこさ中に入りました。
「本当に言った通りだったんだな。」ラビットは、プーを頭のてっぺんから足の先まで見回しながら、「まちがいなく、きみだ。よく来たな。」
「だれだと思ったの?」
「あぁ、いや、よくわからなかったんだがな。ただ、森がどんなとこか、知ってるだろ。だれでもかれでも、うちの中に招くってわけにもいかねぇんだ。気をつけなくっちゃな。何かちょっとつまむかい?」
プーは、いつも午前11時に何かつまむのが大好きだから、ラビットがお皿やらコップやら取り出してくれるのをみて、とっても嬉しくなったんだね。それで、ラビットに「パンにはハチミツ?コンデンスミルク?」って聞かれたときには、すっかり舞い上がって「両方!」って言っちゃったんだけど、いやしんぼだと思われないように、「あ、でも、パンなんかは、どうぞおかまいなく。」って付け足したってわけさ。そのあとは、長〜いことな〜んにも言わずに…しばらくしてからやっと、なんだかべとべとした声で鼻歌を歌いながら立ち上がると、ニコニコ顔でラビットとあくしゅをして、もう行かなくっちゃ、と告げました。
「もう帰るのかい?」と、ラビットは、いちおう礼儀として聞きました。
「えっと…もうちょっといられるんだけどね、もし、その…だから、もしもきみが…」と、プーは食べものを置いておくところの方をじぃ〜っと見ています。
「実を言うとだね、」とラビットは切り出しました。「こっちもちょうど出かけるとこだったんだ。」
「あぁ、そうなんだ。じゃあ、ぼくももう行くね。バイバイ。」
「おぅ、それじゃあな。もし、本当におかわりがいらないんなら。」
「あるの?」プーはすぐに尋ねました。
ラビットは、そこらじゅうのお皿のふたを全部はずして言いました。
「いいや、もうない。」
「そうだと思ったよ。」と言ってプーはうなずくと、「それじゃ、バイバイ。もういかなくっちゃ。」
こうして、プーは穴からはい出て行こうとしました。前足でぐいっとひっぱって、後ろ足でうんしょと押し出して、ちょっとすると、まず鼻先が外に出て…次に耳が出て…次に前足が…次に肩が…そしてー
「あっ、だめだ!」プーは声をあげました。「戻ったほうがいいかな。」
「あぁもう!」プーはまた声をあげました。「やっぱり進まなくっちゃ。」
「どっちもムリだぁ!」プーはまたまた声をあげました。「あぁ、助けて!まったくもう!」
さて、そのうちに、ラビットも散歩に出かけたくなったんだけど、表の穴はふさがっているものだから、裏穴から外に出て、プーの頭の方へとまわってきて、見てみました。
「おい、つまっちゃったのか?」
「え、ううん。」プーは、なんでもないよといった感じで答えました。「ちょっとひと休みして、考えごとをして、歌を歌ってるだけだよ。」
「ほら、前足かしてみな。」
クマのプーが前足を差し出すと、ラビットはよいしょよいしょとひっぱってみたんだけどね…
「もぅ!いたいってば!」プーは大きな声をあげました。
「要するにだ、」ラビットが言います。「つまっちまってるんだな。」
「それもこれも」プーは機嫌をそこねて不満をもらしました。「表の穴をもっと大きく作っておかないからだよ。」
「それもこれも」と、ラビットもピシャリと言い返します。「食べ過ぎたからだ。そう思ってたんだがな、言いたくはなかったってだけの話だよ。どっちかが食べ過ぎてるよな、って。しかも、それがこっちじゃないってことはわかってたんだ。」とたたみかけて、「まぁまぁ、ともかく、クリストファー・ロビンを連れてきてやるよ。」と言いました。
クリストファー・ロビンは森の反対側の端に住んでいてね、ラビットと一緒にやって来て、プーの前半分を見ると、「おばかなプー」って、とってもやさしい声で言ったものだから、みんな本当に安心したんだよね。
「こんなふうに思いはじめてたんだけどね、」と、プーはちょっとだけべそをかきながら言いました。「ラビットが、もう表の穴を使えなくなっちゃうんじゃないかって。そんなことになったら、いやだよぅ。」
「それは俺も嫌だなぁ。」ラビットも言いました。
「表の穴をまた使うって?もちろんまた使えるさ。」
「そいつはよかった。」
「ひっぱり出せないとなるとね、プー、押し戻すってことになっちゃうかもだよ。」
ラビットは、あれこれ考えている様子でひげのところをポリポリかくと、こんな意見を述べました。いったんプーが押し戻されてしまうと、それはつまり中に戻るってことで、いやもちろん、プーといられて自分ほど喜ぶやつは他にいないだろうけれども、そうは言っても、しぜんのおきてってもんがあって、木の中で暮らすものもいれば、土の中で暮らすものもいて、それでー
「つまり、もうずぅ〜っと出られないってこと?」プーが聞きます。
「いや、つまりな、せっかくここまでは出てきたんだからさ、ムダにするのも惜しいんじゃないかってことだよ。」
クリストファー・ロビンはうなずきました。
「じゃあ、やれることはたったひとつだね。プーがやせるのを待つしかないよ。」
「やせるのって、どれくらいかかる?」心配そうにプーが尋ねます。
「だいたい1週間くらいかなぁ。」
「でも1週間もここにいられないよ!」
「ここにいるのはできるでしょ、おばかさん。むずかしいのは、出すほうなんだから。」
「本を読んで聞かせてやるよ。」ラビットが面白がって言いました。「あと、雪にならなきゃいいけどな。」と付け足すと、「それとな、プー、おまえさん、うちの中のけっこうな場所を取っちまってるってわけでさーその、後ろ足のほう、タオル掛けに使わせてもらうわけにはいかないかなぁ?っていうのもさ、ほら、ちょうどそこにあって…何にも使ってないわけで…タオルでもかけられたら、けっこう便利なんじゃねぇかってな。」
「1週間!」と、プーはがっくりして声をもらしました。「ごはんは?」
「かわいそうだけど、ごはんは抜きだね。」クリストファー・ロビンが答えます。「早くやせるためだよ。でも、本なら読んであげるからさ。」
プーはため息をつこうとしたけれど、それもできないって気がついたんだ。それくらい、すっかりはまっていたからね。それで、ポロリ、と、涙がひとつぶこぼれ落ちたんだ。
「じゃあ、心のささえになる本を読んでくれる?進退窮まったクマを、勇気づけて、なぐさめてくれるような。」
こうして1週間のあいだ、クリストファー・ロビンは、そういった本を北のほうのプーに向かって読んであげて、それからラビットは、自分のせんたくものを南のほうのプーにかけて…そしてその真ん中で、プーはお腹がちょっとずつほっそりしていくのを感じました。ついに、1週間の終わりに、クリストファー・ロビンが「よし!」とかけ声をかけました。
まずクリストファー・ロビンがプーの両方の前足をつかんで、次にラビットがクリストファー・ロビンをつかんで、それからラビットの友達やら親戚やらがみんなでラビットをつかんで、みんなで「せーの!」でひっぱって…
それでも長いこと、プーは「あー!」って言うばかりで…
その次は「おー!」になって…
するとついに、とつぜん、プーが「ポンッ!」っていったんだ。ほらちょうど、ビンからコルクの栓が抜けたときみたいにね。
だから、クリストファー・ロビンやラビットやラビットの友達や親戚は、すってんころりん後ろにひっくり返っちゃって…その上に乗っかってきたのが、ウィニー・ザ・プーだったのさー抜けたんだね!
こうして、プーはみんなに「ありがとう」のおじぎをすると、得意げに歌いながら、森のお散歩の続きを始めました。そんなプーの後ろ姿をやさしい目で見つめながら、クリストファー・ロビンはつぶやきましたとさ。「おばかなプー」ってね。
※本記事掲載の訳は、推敲の上、加筆修正を施す可能性があります。
(c) 翻訳: Hirohito KANAZAWA
(c) 翻訳: Hirohito KANAZAWA
→【参考】英語原文はこちらのサイト(外部)に掲載されています。
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