When the firefighters went into the building, they heard the windows breaking.
質問の趣旨は、「窓は勝手に壊れるのか?・何らかの外的要因によって『壊される』対象(= breakという行為の影響の受け手)なのだから brokenなのではないか?」というもの。
■ 自他交替(使役交替)のできる動詞について
結論から言えば、確かに窓が勝手に割れる状況というのは現実的ではないにせよ、上の例文では breakingが自然と考えられる。もっとも、brokenを用いて表すべき状況も考えられるが、窓が割れる原因について異なる想定が生じる。図1に見られるように、breakや freezeといった動詞(能格動詞)は、「人や原因 (x)が対象 (y)に働きかけることで、対象 (y)が変化して結果状態 BROKEN/FROZENに至る」という意味構造を持つ。
すなわち、break「壊す」という行為が成り立つには、その対象は BROKEN「壊れる」という状態になっている必要があり、同様に freeze「凍らせる」と言うからには FROZEN「凍った」という結果状態に至らなければならない。
影山 (2001)『日英対象 動詞の意味と構文』p. 33 より |
このような <行為・活動> → <変化> → <結果状態> の全てを自らの意味の中に含む動詞は、自動詞用法と他動詞用法の両方を持つ(自他交替または使役交替と呼ばれる文法現象)。
影山 (2001)『日英対象 動詞の意味と構文』p. 34 より |
- John broke my computer.(break: 他動詞用法)
- My computer broke.(break: 自動詞用法)
- 子供が障子を破った。(破る: 他動詞用法)
- 障子が破れた。(破れる: 自動詞用法)
また、同じ「破る/破れる」という動詞でも、
- *{約束/世界記録/契約}が破れた。
■ 「熱割れ」が原因であっても…
改めて冒頭の例文:When the firefighters went into the building, they heard the windows breaking.を考えると、この文の言わんとしていることは、「消防隊員が(火事の現場である)建物に入った時に、窓が割れる音を聞いた。」ということであろう。
火事場などで窓が割れるのは「熱割れ」と呼ばれる現象だそうで、物理的な外的要因は熱ということになる。しかし、ここでも「熱によって割れる」という窓ガラスの持つ内的性質に起因する状態変化に注目して情報を伝えたいのであり、熱の作用について語りたいのでない。
したがって、The windows broke.「窓が割れた。」という breakの自動詞用法を基にして "知覚V+O+~ing"(Oと~ingは SVの能動関係)の構造に取り込むと、breakは現在分詞の breakingという形になる。
■ brokenを用いると?-尾崎くん(仮名)が登場
では、能格動詞の自動詞用法 (6)と受動態 (7)ではどのような違いがあるのだろうか?- The windows broke.
- The windows were broken.
このことは、6に動作主を導く by句を別途つけ加えることができない事実からも示される:
- The windows broke (
*by him / *by the heat).
- The windows were broken (by him / by the heat).
可能な解釈の1つには、そもそも the buildingが火事である必要すらなく、消防隊員が偶々そこに入った時に、盗んだバイクで走ってきた尾崎くん(15歳・仮名)によって窓ガラスが割られた音を聞いた…というものだってありうる(笑)
☆Here is the Path to Wonderland★
あいつが割ったんです!( ゚д゚)σ 熱【参考文献】
影山太郎(2001)『日英対象 動詞の意味と構文』,大修館書店,東京.
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