Monday, 28 December 2015

2016年のトレンドは英語試験のリニューアルらしい。

来年5月から TOEICが新形式に変更となるようですが、英検も2016年度第1回から各級(3級以外)リニューアルが行われるとのこと:
実用英語技能検定 2016年度第1回からのリニューアルのお知らせ
2級にライティングが追加されたり、1級ではPointsが消えて自分で考えをまとめる方向に変わるというのは、その理念通りに事が進めば好ましい変更だとは思うのですが、実際のところ懸念も多いですね。

自分で考えをまとめ、理由とともに意見をまとめる」形式やで?

通常の知的生活を送っていれば、英検1級の英作文のトピックとなるような話題に対する意見など、わざわざ英検協会にpointsを提示していただかなくとも構わないのではないか?と思うのだが…(実際、個人的にはpointsで縛られる方が面倒に思っていた)

しかし、「自分のアタマで考える」という習慣のない日本人英語学習者*の世界では、英検1級の対策といえば、もっぱら「過去問や英作文問題集の解答例を丸暗記して、そこからアイディアをパクってくる」という状況のようである。

現状ですらそうであるのだから、今回の形式変更によって、このような悪しき流れが加速していきそうだし、更には準1・2級受験者にも波及していく気配を感じる。

その結果、「自分で考えをまとめ」…という方向への形式変更のはずが、ますます「他人のアイディア丸パクリ」連中の増殖を生む結果になるのではないかと思えてならない。

試験ができるようになりたいのか、英語ができるようになりたいのか?

もちろん、「アウトプットのためには、まずインプットが大事」という考え方は理解できるし、もっと言えば自分の指導でも強調していることではある。

しかしそれは、あくまでも自分の意見・イイタイコトがあって、それを英語でどのように表現・構成するか?という段階になって参考にするためのことであり、自分の脳の働きの不足を他人様に補っていただくためにインプットをするということでは(当然ながら)ない。

試験のことだけを考えるならば、本当は合格するに値する実力のない者でも形だけ結果を得るためには、「模範」解答を丸暗記→転用というのがテスト方略になってしまうのかもしれないが、結局それで普段の英語使用の際にどうなるというのだろう?
また試験においても、たまたま勉強したトピックが出題されれば良いが、そうでなければ手も足も出ない(次の回で狙いのトピックが出題されるのを祈る)ということにしかならない。

英検1級を受験するのであれば、リーディング対策として…というか、そもそも普段の英語との関わりにおいて、社会性の高い話題についての英文を読む機会があると思うが、その時に内容理解で終わってはいけない
読んだ内容を人に伝えたり、自分の意見を述べたりするところまでを射程に捉え、「アウトプットの際に使える語彙・表現はないか?」・「話の展開や論理構成はどのように組み立てられているか?」といったように、参考にできることを見逃さない鋭い眼で読むことで、「アウトプットのためのインプット」の質は格段に向上する。

空虚なアタマのまま「対策」に走るか、超高速の脳の働きを目の当たりにするか?

英検「対策」の授業と言っても、英作文問題のために模範解答を音読・暗唱させるようなものであれば、生徒の脳は実質ほとんど動いておらず、空虚なものである。
仮に、目の前の生徒が自力で理由を3つ考えることができず、まずはモデルを追わせるのであれば、他人の書いた「模範」解答などではなく、教師自らのモデルを提示すれば良い話ではないか。

Hirohitoの場合は、試験対策に限らず、生徒のイイタイコト and/or あたし自身のアイディアを英語で表現するためのモデルを片っ端から示していく。(この際には、まず生徒に考えさせて…などというムダな時間は使わない。どうせ大なり小なり修正が必要になるのだから、正しい英語表現を学ぶ部分こそ他人(教師)の力に任せてもらって、それを頭に定着させる練習を行った方が、よっぽど効率が良い。

模範解答や解答例というのはエッセイを書いた「結果」でしかなく、生徒にとって本当に役立つのは、アイディアの発想と英語で書いていくための「過程」であろう。
このブログを読んでいるような学習者諸君には、その過程における高度な脳の働きに触れつつ自らの脳もフル回転させ、真の意味で英検の出題変更の意向に沿った実力を示した上で目標を達成していただきたい。

☆Here is the Path to Wonderland★

  • Write an essay on the given TOPIC.
  • Give THREE reasons to support your answer.
  • Structure: Introduction, main body, and conclusion
  • Suggested length: 200-240 words

TOPIC
Should learners of English be encouraged to copy and paste model essays of the Eiken test?

Sunday, 20 December 2015

Star Warsブームに便乗して、名詞の性質から見える世界の捉え方を説く。

宇宙戦争たち

この週末、Star Wars: The Force Awakensが封切られ話題を呼んでいるが、そこで warsが複数形であることに目をとめている人がどれだけいるだろうか?

もちろん、今回で 7作目を数えるこの超大作シリーズでは、どのエピソードにおいてもドンパチやっているわけなので、warsと複数形になっていることに疑問を感じることもないかもしれない。

だからこそ、せっかくの機会だから(ということにしてしまって)、今回の記事では warと、その対極をなす peaceという英単語の振る舞いに注目し、単数・複数=つまりは可算・不可算という英文法の規則が、実は「ことばを通じて人間が世界をどう認識しているのか?」という姿を如実に映し出すものであることを見ていくことにしよう。

War: 可算用法も不可算用法もあり

まずは warから観察していく。

Star Warsという映画タイトルからも明らかである通り、warは個々の戦争を捉えて可算名詞として使うことができる:

(1) to win/lose a war 戦争に勝つ/負ける
(2) Britain fought in two wars in the 20th century.
英国は20世紀に2つの戦争を経験した。

一方で、「戦争状態」のことを表す不可算名詞としての用法もある:

(3) declare war against A A(相手)に宣戦布告をする
(4) The country was at war with its neighbours.
その国は近隣諸国と戦争状態にあった。

Peace: 不可算用法のみ!

これに対し、peaceという単語は不可算名詞としてしか用いられることはない:

(5) bring peace to A A(国など)に平和をもたらす
(6) maintain peace 平和を維持する
(7) The countries have been at peace for more than a century. 
その国々はもう一世紀以上も平和であり続けている。

可算・不可算名詞の考え方とは?

Warpeaceも、ある国や地域の置かれる状況(=形のないもの)を表す抽象名詞として、不可算名詞で使われることは共通している。では、なぜ warだけが可算名詞としても振る舞うことができて、peaceはできないのであろうか?

このことを説明する前提として、まずは英語の可算・不可算名詞の考え方を押さえておく必要がある。

可算名詞→他と切り離して区別できる・分解可能

典型的な可算名詞 table (a table / two tables...)で考えていくと、まず tableというものは、その形から他のもの(chairdish, glassなど)と区別することができる。更に、a tableを分解すると、the (table)top(天板)と the legs(脚)に分かれる。

不可算名詞→特定の形を持たない・分解不可能

他方、典型的な不可算名詞 waterの特徴を見れば、「方円の器に従う」と言うように、特定の形というものを考えることができない。また、a bucket of water(バケツ一杯の水)から a glass of water(グラス一杯の水)を汲み出し、そこから a drop of water(一滴の水)を吸い出したところで、量は変わっても「水は水」であり、その性質は一切変わるものではない。

人間は「ことば」を通じて warpeaceをどのような「もの」と捉えているのか?

以上を踏まえていくと、a warとは、たとえそれが百年戦争のように長い期間に及ぶものであったとしても、始まり(開戦)と終わり(終戦)によって歴史の時間軸上で「線分」として切り取られる(=形を想定できる)ものであり、その内部構成は「戦局」と呼ばれるように、様々な状況からなる出来事として捉えられていることになる。
したがって、wartableのように「数えられるもの(物体)」として扱われうるのである。

対して peaceの方は、悲しいかな世界には束の間の平和しか訪れないような現実がある国・地域も存在するが、それでも英語ネイティヴの世界観としては、均質的で、始まりも終わりもなく恒久に続くものと考えられているのである。
よって、peacewater同様に「数えられないもの(物質)」のようにしか扱われないということになる。

この2単語の捉え方の違いは、「期間」を表す duringと共起できるか?という点においても現れてくる:

(8) Many innocent civilians were killed during the war.
戦争中には多くの罪のない市民が命を落とした。
(9) *There was plenty of food to eat during (the) peace.
平和な間には食べるものが豊富にあった。

可算名詞の warは、時間軸上で他と区別できるという性質が想定されているため、「それが起こっている間」として表現することも当然可能である。
しかし、不可算名詞の peaceでは、時間軸上の境界が想定されていないので、英文法の枠組みの上では、duringを用いて「平和な間に」と表すことはできない…少なくとも、現代英語の用法では。

★Here is the Path to Wonderland☆

英文法の用法に変化が生じ、peaceが可算名詞に(も)なって、 'during (the) peace'などという表現が可能になってしまう…
そんな世界は作ってはならない。

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Sunday, 29 November 2015

こん平師匠の「ハイ!」と授業の「身体性」

こん平師匠の挙手・返事

最近の pastimeの愉しみの一つは、先代の圓楽師匠(五代目)が司会の頃の笑点の動画を見ること。
懐かしいねぇ、青春時代を思い出すねぇ( ̄▽ ̄)

で、余暇として見ているのではあるけれども、通しているのは教師の目。
たい平師匠に毒を盛られて現在は高座復帰を目指して闘病中の、林家こん平師匠手の挙げ方・指名された時の「ハイ!」の返事が素晴らしいと思います。

まっすぐ手を挙げなさい」とか、「元気よく返事をしなさい」などと言うよりも、「こん平師匠になりなさい」で、具体的かつ立派なモデルになるのではないでしょうか?

【動画 0:21あたり】


授業の成功を左右する「身体の構え」

落語でも英語でも、芸を磨くに当たって本来最初に考えるべきことは、師弟が姿勢を正し・挨拶を交わし・目と目を合わせる「身体の構えにこそあるだろう。

個人的には、Skypeレッスンや動画配信レッスンでは、場合によっては生徒の姿が見えないだけに、尚更この身体性を意識するようになった:通信状況の相性により、ビデオ通話ではどうしても立ちいかない…という場合は別として、可能な限りはお互いが目と目をつないで授業を行うに勝ることはない。

また、もちろん受講環境やレッスン形態によるのだが、Skypeと別の何か(あたしの場合だと Google Driveの画面共有が多いか)を開いて受講する時は、画面半分はSkypeを残しておくことを勧めたい。いわゆる「ワイプ」のような小窓の画面も表示されるが、やはりあれだけだと、体を向き合わせて稽古をつける感覚が生まれにくいように思える。

Hirohito自身も、生徒の顔は最低でも画面半分を占めるように設定し、発音を特に注意して見る時には全画面表示に切り替えている。

紆余曲折・試行錯誤を経て、最終的には chalk & talk(マーカー&ホワイトボード)形式に落ち着いたのも、授業の臨場感・身体性の一環ということになろう…Skypeの画面を大きくしないと、板書が見えないでしょ?( ̄m ̄〃)

何をどう教えるか以前に、姿勢・挙措動作・挨拶・返事・アイコンタクト授業に臨む身体を整えてこそ。学習効果というものを積み上げるためには、身体性という強固な土台が欠かせないと、Hirohitoは考えています。

☆Here is the Path to Wonderland★

そして、あたしの生徒たちが、揃いも揃って「チャラーン!」と言うようになったりして( ̄▽ ̄;)


Friday, 27 November 2015

Misleading

発音を細部まで「完璧に」しようとするほど、単語単位の発音に気持ちが向いてしまい、ブツ切り・全単語を強く、同一リズムで話してしまう(だから、「完璧な」発音など求めずに、テキトーに通じる発音でお茶を濁しましょう)…という趣旨に読めてしまうブログ記事を見かけたのだが…( ̄ω ̄;

機能語の弱形を低く・短く・あいまいに発音するのと、英語の発音学習をあいまいで済ませていい、というのは(当然ながら)全く異なる。

あいまい母音が確固たる唯一の音価を持っていない(話者や環境によって大きく違って聞こえる)ことと、1つひとつの発音をモデルと同じように完璧に再現しようとすることは(当然ながら)矛盾することではない。

もしも、発音にこだわることで、フレーズ単位・文単位の強弱リズムヤプロソディーがおかしくなってしまうならば、それは学習者が「完璧さ」について誤解を抱いているのである。そういった生徒が目の前にいるのであれば、指摘・矯正(かつ強制)によって誤解を解き、適切な箇所で完璧に弱くあいまいな発音ができるように導くのが教師の仕事である。

☆Here is the Path to Wonderland★
ほら、そこは「きちんと」弱く言え!


Thursday, 5 November 2015

TOEICの出題形式が変わるらしいけどさぁ…

「ふ〜ん(ほじほじ)」的リアクションでOK

英語ができればスコアが取れるという前提を覆すような変更があるわけじゃないんだから、天地がひっくり返るかのように騒ぎ立てるほどのことじゃないってば( ̄ω ̄)
(参考→TOEIC®テスト 出題形式一部変更について

もちろん、「TOEIC屋さん」にとってみれば、

  • 出題形式変わるぞ〜!
  • 今までの対策じゃダメだぞ〜!
  • オオカミが来たぞ〜!
  • ウチは新形式の情報をいち早く取り入れてるぞ〜!
  • こっちの水は甘いぞ〜!
  • 王様の耳はロバの耳〜!

と、儲けるために騒ぎをできるだけ大きくしなきゃならんのでしょうけれども。

この狂乱状態を見ていると、どうも「英語学習」の文脈ではなく、言ってみれば「人気ゲームシリーズの新作発売決定!」というニュースが発表されて、「それをいち早くプレイ・攻略したいゲーマー」が興奮気味に話しているだけのような印象を感じる。

ウイイレが上手くなったからってサッカーが上手くなったわけではないのと同様(「役に立つ」部分はあるだろうけれども)、TOEIC対策といってもゲーマーのような連中が攻略法を説いているような状況が主流のままでは、出題形式こそ変われど、肝心の学習者の(平均的な)英語能力は何も変わらないだろう。

形式変更→では、本物の対策とは?

今回の発表を受けての「業界」の反応をざ〜っとググってみたのですが、まぁ残念なことに、現状ほとんどが公式発表の単なる拡散と感想程度のコメントがあるばかりですね。

TOEICを(というか英語を)教えている自覚があるのなら、「では、学習者は今後どのように学んでいけば良いのか?」という部分への議論が活発になされてほしいものなのだが…

■やはり発音能力が前提

HirohitoのTOEIC対策レッスンが出す答えとしては、基本方針に一切の変更はありません。

試験問題の英文やリスニング原稿を正しい発音・リズム・イントネーションで読めるようになることにより、ナチュラルスピードで聴き取れる・英文の読解スピードが上がる
という部分を強化していくことが、引き続き一番の対策になると考えています。全体の英文量が増える方向への変更ということもあり、「たどたどしくしか読めない→時間切れ」となってしまう可能性はより高まるわけで、その対策として大前提になる英語を正しく音声化できる能力の重要性が増していることになります。

■文法力がより一層大事に

表面的には、
  • 短文穴埋め問題(Part 5)の設問数が減ります。
  • テキストメッセージやインスタントメッセージ(チャット)、オンラインチャット形式で複数名がやり取りを行う設問が加わります。
  • Elisions(省略形: going toが gonnaなど)、 Fragments(文の一部分: Yes, in a minute; Down the hall; Could you?など)を含む会話が流れます。

という変更点を見ると、「じゃあ細かい文法を勉強するよりも、実際ネイティヴが会話で使う表現を覚えたほうが良いんだ!」と考えてしまうかもしれません。

形式変更後には、TOEIC屋さんが『新形式頻出!ネイティヴが使う会話フレーズ集』みたいな燃えるゴミを数多く排出することでしょう…(-_-;

しかし実際には、これらは文法能力重視の変更なのです。

Elisionは音声的、Fragmentsは文法的な省略現象と言えますが、「省略」ということは当然その裏には「原型」が存在するわけであり、それを頭の中で復元できて初めて正しい理解に至ることができるのが省略表現です。

省略しないで言うとどのような文になるのか?・文脈上の既知情報がどのように消されているのか?・代名詞や指示語は何を指しているのか?…といった、文法力に立脚した読解(および、それをベースとした聴解)が、表面には見えにくい形ですが、今まで以上に重要度を増している、というのが今回の変更点の大きなポイントと言えるでしょう。

「意図を問う」問題のベースも発音と読解


今回の発表を見ると、TOEICが「話し手・書き手の意図を理解する」という能力を重視していることがよくわかります。
  • 会話やトークの中で話し手が暗示している意図を問う設問が加わります。
  • 文書中で書き手が暗示している意図を問う設問が加わります。

「暗示している意図=言われて/書かれていないこと」を理解するためには、「言われて/書かれていること」を手掛かりに進んでいくしかない。そしてこの力を伸ばすには、最近の英語教育では(TOEIC対策では特にだね)軽視されがちな精読が欠かせない。

一つひとつの表現に立ち止まって考え、その文が何を意図しているのかに思いを巡らすような丁寧な読みを積み重ねて初めて、深く+速く読めるようになっていくものである。

確かに今までの形式のTOEICでは、情報を「検索する」だけのような読み方でも対応できる問題が多かったが、今後はそのような小手先の芸では通用しなくなってくるわけです。

同時に発音も大事ということは、実際の新形式のサンプル問題 (PDF)を見ながら説明した方がイメージしやすいであろう。

p. 7の Question 8: Why does the woman say, "I can't believe it"? といった問題が出題されるようになるとのことですが、これは(広い意味での)音読をどれだけ丁寧に行っているか?にかかっている。

形だけの、感情も味も素っ気も塩も胡椒もない音読をただこなしているだけでは、この "I can't believe it!"を理解することは難しいかもしれない。(スクリプトを見れば難しそうには感じないかもしれないが、実際にはリスニング問題だからね)

音読ひとつ取っても、どれだけ細部にまで気を配り、話し手や書き手の意図・感情まで反映した練習を重ねているか?が本番に生きてくるであろう。


以上見てきた通り、全体としてはより本質的な「英語の」学習が求められるような変更になってくれているかな、という印象で、テストの波及効果としては好印象を持っている。

だからこそ、縁あってこの記事を読んでくれた読者諸君には、変更点を表面的にしか捉えず、本質を見誤ったような対策に走るようなことは是非とも避けていただきたい。

本物の対策はこちらで:


本物の英語教師 Hirohitoのスカイプレッスン
TOEIC Plus!
http://cafetalk.com/lessons/detail/?id=13246&lang=ja

★Here is the Path to Wonderland☆


磯野〜、野球しようぜ〜!

Tuesday, 15 September 2015

Recommendのすゝめ

前回の記事suggestの用法を recommendと比較して説明しましたが、Cafetalkの講師コラムの方で、そこで挙げた "recommend 人 to do"という語法が不自然なのではないかという質問をいただきました。
良い機会なので改めて文献およびコーパス調査を行い、元埼玉大学の助教授(当時)のイギリス人ネイティヴ・英語学ゼミの師匠・および友人の英語話者に確認を取ったので、新たな記事として今回は recommendの用法に焦点を当てて見ていきたいと思います。

*元記事での recommendに関する記述は、以下に述べるような追加説明を要するため、混乱を避けるために削除・修正してあります。ご了承ください。

■ "recommend 人 to do"は「不自然」なのか?

結論から言えば、recommendが後ろに "人 + to do"を取る用法というのは確実に存在し、文法的です。(ちなみにイギリス英語での用法だそうです)
しかし文法性」と「自然さ」は区別されるべきで、 質問者が疑問に感じた通り、ネイティヴなら使わない・極めて不自然に感じる場合があるとのことでした。

まず、質問者が提示してくださった以下の例文は、私も直観的に「そうは言わないだろう」と思いましたが、実際にネイティヴに聞いてみても "not incorrect, but [...] it does sound a little unnatural" / "very weird"という判断でした:
I recommend you to read this book.
「あなたにこの本(を読むこと)を勧める」ということを言いたければ、より自然な表現は
You should read this book.
I (would) (really) recommend this book.
I suggest/recommend (that) you read this book.
といったものになるとのことです。

一方で、Hirohitoが OALDで見つけた wouldを伴った以下の用例に対するネイティヴの判断は、"completely correct and natural" / "it feels natural for me to put ‘would’ or ‘that’"というものでした:
We'd recommend you to book your flight early.
「フライトを早めにご予約されることをお勧めします。」
この wouldは仮定法で「心的距離」を表し、結果として控えめ・丁寧な提案となっています。このような場合であれば、"recommend 人 to do"の形も容認されるようです。

■ 学習者への指針

では、例えば "I would recommend you to do something"という形で覚えれば良いか?というと、それは英語学習者に対しては「勧め」られないのが実際のところです。
1つには、大学時代の英語学ゼミの先生がコーパスで調べてくださった情報によると、
イギリス英語のコーパスには例が少ないながらも出ては来ます。が、イギリス英語話者にも使うべきでないという人もいるようですね。アメリカ英語のほうでは [...] recommendの後ろがthat節で原形を使うというのが多いようです。問題の形はあまり使用を勧めない方が無難ではあるでしょう。(太字・下線は Hirohitoによる)
とのことであり、使用頻度の面から見てもあまり一般的ではないということが挙げられます。

上と関連して、同じ内容を表すのに、より一般的な  "recommend (that) S V ~"という形が使えるのだから、こちらを優先して覚えたほうが良い、ということがあります。(ちなみにVが原形になるという部分は、それだけでまた1つ記事が書けるほどの内容になるため、今回は説明を省略します。)

★(まずは)以下の形で使いこなせるようにしよう!★
I recommend (that) you read this book.
We'd recommend (that) you book your flight early.
**この意味では、前回の記事で suggestの比較対象に持ってくるべきだったのは、 recommendではなく adviseであったということになります(修正済)。


■ 【補足①】recommendの用法を語源から再検討

今回の件に関する別な視点として、"easiest rule"は「recommend + 名詞」なのでは?というコメントをくれたネイティヴもおり、この点は語源と絡めて説明すると面白いので、以下で見ていきます。

"recommend + 名詞"の例→ I recommend this book (to all my students).

改めて recommendの語源を示すと:
  • re-: 強意 + commend: 褒める・勧める→「大いに勧める」
よって「褒める対象」として最も典型的なのは、人や物といった、名詞で表されるものということになります。それをスタートに構文の拡張が起こり、「『〜すること』を勧める」という意味で動名詞が取れるようになり、更に「・・・が〜すること」という出来事・事象を勧めるために、"人 to do"や that節を伴うようになったと考えることができるでしょう:
I recommend this book (to all my students).
→「物」を褒める
He recommended reading the book (before seeing the movie).
→「〜すること」を褒める
I recommend (that) you read this book.
→「・・・が〜する」という事象を勧める


■ 【補足②】suggestの sarcastic(皮肉的)な用法

前回の記事に関して、「suggestの用法は sayと同じ」という表現も誤解を招きかねないので補足しておきます。
記事の意図としては、suggestは後ろに that節を取るということを強調するために、「用法が」sayと同じという言い方をしました。両者の「意味」は異なりますし、suggestと sayの用法が「すべて」一致するというわけではないので、注意してください。
今回情報をくれた先生の一人が「確かに suggest recommendや proposeよりもソフトな提案を表すが、『皮肉的」な意味で一般に辞書に載っている定義よりもずっと強い意味を表す用法がある」という例を教えてくださったので紹介します。
(教師が生徒に)I suggest that you come to class on time next week.
上の文が本当に意味していることは、"If you don't come on time then I will punish you."「来週は時間通りに授業に来るように。(もし遅れたら罰を与える)」ということ。よって前回の記事に書いた「suggestは慎ましい性格」という範疇にはとても収まらないような強い意図を伝える用法も(その先生いわく、かなり頻繁に使われるものとして)存在します。
裏を返せば、もともと「suggestは慎ましい性格」であるからこそ、あえてその単語を選択することによって、かえって強烈な皮肉をかます効果が現れる…とも考えられます。


★Here is the Path to Wonderland★

recommendは(suggest同様)that節を後ろに取る用法をまず覚えるべし!


Wednesday, 9 September 2015

Suggestの用法は◯◯◯と同じ!

「〜を提案する」という意味の動詞である suggestは、日常よく使う単語のひとつだが、これを正しい語法で使える学習者は少ない。もっと言えば、使い方を誤解している人がかなり多いようである。

最近のレッスンで、短い期間で2人の生徒が suggestを間違った使い方で用いていたので指摘・解説をすることになったし、実を言うと私自身も、大学院時代くらいまでは、辞書で確認しないと安心して使えないということが何度もあった。

当記事では suggestの用法を正確に記憶するための打開策を紹介し、縁あって本物の英語教師 Hirohitoを知るに至った読者の方々には、もう二度と迷うことなく、正しい語法で使いこなせるようになっていただきたい

■Suggestの用法は◯◯◯と同じ!


日本人学習者にとって、suggestの用法を間違いやすい大きな理由は、「〜を提案する」という訳語に頼って記憶していることにある。

このことにより、"同じような"意味を表す(ように錯覚する)adviseなどの動詞の類推で、"advise人 to do"と同じように使ってしまいがちになる。

Suggestの正しい用法は、(幾つかパターンはあるが「人が〜することを提案する」の意味でまず頭に入れて欲しいのは)、
"suggest (to 人) that S + V ~" という語法である。
つまり、「誰々に提案する」という提案相手を導くために "to 人"を伴うことはあっても、提案内容は that節で表すのがポイント。

そしてこの語法パターンを記憶に残すためには、以下のことを頭に叩き込んでいただきたい:
★Suggestの用法は Sayと同じ!★

Sayがthat節を後ろに取る」ということは、大半の英語学習者にとって強固なイメージが確立されていることだと思う。
また、直接話法/間接話法を学んでいれば、"Tom said to me that he was sorry."のような例文も、なんとなく見覚えがあるのではないだろうか。
よって、多少乱暴だが「suggest = say」と覚えておくことで、間違った用法で使うことを防ぐ防波堤としては充分に機能する

■"suggest (to 人) that S V ~"が表す提案のニュアンスとは?


今回の内容で絶対に頭に残して欲しいことは 「Suggest = Say」なので、この先は余力のある人だけ進んでいただくので構いません。

次に疑問に思って欲しいことは、「同じ」提案系でありながら、なぜ一部の動詞は後ろに "人 to do"を取れて、suggestはそのパターンを取ることができないのか?ということ。これは、語源や細かい差異に光を当てることで浮かび上がってくる。*

まず語源を見ていくと、
suggest: sug-/sub-(下に)+ gest(運ぶ)→自分の考えを相手の思考の下に運ぶ

英英時点の定義では、
suggest: to put forward an idea or a plan for other people to think about

(参考:Oxford Advanced Learner's dictionary

以上のことから、suggestは「相手に考慮に入れてもらえるように自分の考えをそっと差し出す」程度の、かなり慎ましい性格の動詞なのである。

よって、判断については相手に委ね、「まず提案を述べてみる」という程度のニュアンスになる。その意味でもやはり sayに近い性質を持っていると言えるのである。

★Here is the Path to Wonderland★

  • Suggestの用法は Sayと同じ!
  • suggestは、相手に判断を委ねて「まず提案を述べてみる」という程度のニュアンス!

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Friday, 21 August 2015

どらげない


英語 ver.の動画を見つけたのですが、Fukaseさんの発音が好印象。

奇抜な出で立ちとは裏腹(?)に、finally, versionの摩擦音 /f, v, ʒ/や、starryとbirdsの母音 /ɑː(r), əː(r)/の違いなど、基本に忠実な発音で歌われています。

細かいところを指摘しだせば、Lの舌先の押し付けが弱い感じがあったり、サビの Dragon night (x3)後の tonightで、弱音節の to-部分が担う音符が重すぎる印象はありますが、それでも英語学習者がモデルにするのに充分な素材。



こういった「J-Popの英語版」が良いのは、洋楽には馴染みがないという人でも、原曲のリズムとメロディーを知っていれば、英語の練習用素材として導入していきやすいということ。
日本語ではよく知っている(何ならカラオケで歌ったことがあるかもしれない)曲を、英語詞でも同じようにカッコよく歌い上げるためには、英語の音節・リズム・リンキングなどに意識を向けざるを得ない。

英語教師としては、「訳詞」でなくて良いので、同じ曲の日本語版と英語版を出してくれるアーティストは非常にありがたい存在です(^^)



★Here is the Path to Wonderland☆
トランシーバーで口元が隠れているのが惜しいくらいだ( ̄m ̄〃)


Tuesday, 30 June 2015

Aliceのキャラクター性格診断:Which Alice in Wonderland Character Are You?

『不思議の国のアリス」刊行150周年を記念して、以下のTIMEのページで「アリスのキャラクター性格診断」が公開されていました。
http://time.com/3936871/alice-in-wonderland-quiz/?fb_ref=Default

質問と選択肢の訳を載せておきますので、皆さんも自分の "Wonderland soul mate"を探しに行ってみてください♪(選択肢の順序はランダムのようです)
(ちなみに Hirohitoは「アリス」でした。)

1. IN THE CLASSROOM, YOU ARE THE STUDENT MOST LIKELY TO:
【クラスで私はこんな生徒 】
・find a way to get out of class early(何とか早く教室を抜け出そうとする)
・offer to help someone else with their homework(他の子の宿題を手伝ってあげる)
・ask an annoying amount of questions(うんざりするほどの質問攻め)
・tell the teacher that he or she is wrong about something(チクリ魔)
・be tardy(のろま)

解説→ tardy: doing something too slowly or late


2. WHICH MOVIE WOULD YOU PREFER TO WATCH?
【好きな映画は?】
・Fear and Loathing in Las Vegas
・Toy Story 3
・The Devil Wears Prada
・Avatar
・The others(その他)


3. IF YOU COULD ONLY EAT ONE FOOD FOR THE REST OF YOUR LIFE, WHAT WOULD YOU CHOOSE?
【一生これしか食べられないなら?】
・Medium-rare steak(ミディアムレア・ステーキ)
・A cherry tart with a side of turkey(七面鳥付きチェリータルト)
・Bread and butter(バター付きパン)
・Kale(ケール:青汁の原料としてよく使われる野菜)
・Raw fish(生魚)

解説→ for the rest of your life: このあと一生 / with a side of: (例) a hamburger with a side of fries


4. WHAT WOULD YOU BE MOST LIKELY TO DO IN A CRISIS SITUATION?
【危機的状況に立たされたらどうなる?】
・Start snapping at people around you(周りにいる人に飛びつく)
・Get out of there as fast as possible(出来るだけすぐに逃げ出す)
Embrace the chaos(混沌を受け止める)
・Protect whoever needed protecting(助けが必要な人を守る)
・Turn pale and start fidgeting(真っ青になってブルブル震える)

解説→ crisis: a situation in which there are a lot of problems / snap at: try to bite something / embrace: em- (= in) + brace (= arms) -> to accept / chaos: カオス・混沌(発音は | ˈkɒs |) / fidget: to keep moving your body, especially because you are nervous


5. WHICH LITERARY CHARACTER DO YOU MOST IDENTIFY WITH?
【自分に一番近い文学の登場人物を選ぶと誰?】
・Don Quixote
・Harry Potter
・Sauron
・Sherlock Holmes
・The Cowardly Lion(臆病ライオン)


6. IF YOU HAVE A CRUSH ON SOMEONE, WHAT ARE YOU MOST LIKELY TO DO?
【誰かに夢中になったら、どうなる?】
・Ask them all about themselves(その人の全てを知りたい!)
Clam up and probably start sweating(黙り込んでしまい、きっと汗ダラダラ…)
・Kick them in the shin(向こうずねを蹴る)
・Try to impress them with some feat of derring-do(大胆に気を引こうとする)
・Play it cool(冷静に振る舞う)

解説→ have a crush on someone: 〜に熱を上げる / clam up: 口を固く閉ざす(clamは「二枚貝:クラムチャウダー」) / derring-do: brave actions


7. WHAT IS YOUR IDEA OF A FANTASY VACATION?
【理想の休暇プランは?】
・Attending a medieval-themed camp for adults(中世をテーマにした大人向けキャンプに参加)
・Eating your way through Europe(ヨーロッパ食べ歩き)
・Just getting off the grid(俗世間を離れる)
・Exploring an uncharted isle(未開の島の探検)
・Lying on a beach somewhere, being fanned and fed grapes by the locals(ビーチで横になり、現地の人に横であおいでもらい、ブドウを献上される)

解説→ medieval: 中世 (Middle)の / off the grid: not using public supplies of electricity, gas water, etc / uncharted: not marked on any maps


8. IF YOU FOUND A PIECE OF CAKE IN THE OFFICE KITCHEN, WHAT WOULD YOU DO WITH IT?
【職場のキッチンでケーキを見つけた。どうする?】
・Eat every last crumb, of course.(最後の一口まで頂きます、もちろん)
・Eat just enough so that no one would know it had been touched(気づかれない程度につまみ食い)
・Make sure it was returned to the rightful owner(持ち主の手元にきちんと渡るようにする)
・Pretend you bought it for your boss and present it as a gift(上司のために買ってきたフリをして、お土産と言って渡す)
・Send a note around about how this kind of thing attracts bugs.(こんなことをしてると虫がたかる、と注意書きを配って回る)

解説→ crumb: very small piece of food / rightful: right (権利) + -ful (~に満ちた) / attract bugs: 虫たちを魅了する -> 「虫がたかる原因となる」の意


9. IF YOU WERE A POP STAR, YOU WOULD MOST LIKELY BE:
【あなたがポップ・スターだとしたら、次のうち誰?】
・David Bowie
・Kanye West
・Lady Gaga
・Taylor Swift
・I do not sing in front of people, ever(人前で歌うだなんて、とんでもない)


10. HOW IS A RAVEN LIKE A WRITING DESK?
【カラスとかけて文机ととく。その心は?】
・Why, that’s a silly question(まぁ、変ななぞなぞ。)
・I don’t do riddles(なぞなぞ遊びなんてしません。)
・There’s a raven? Where is it? Birds have dangerous sharp bills(カラスがいるって?どこに?鳥はくちばしが尖っていて危ない!)
・It depends which raven and writing desk we’re talking about(どんなカラス・どんな文机かによるね。)
One is good for writing books, the other better for biting rooks(1つは物語を書くのに良い。もう1つはミヤマガラスをつつくのにもっと良い。)

解説→ How is a raven like a writing desk?: 『不思議の国のアリス』で帽子屋がアリスに投げかけた「答えのないなぞなぞ」 / One is good for writing books, the other better for biting rooks: この「答え」は初めて目にしました。good--betterという比較変化を使った対比と、writing--biting, books--rooksという脚韻で、「答えのないなぞなぞ」に「答え」ています。

性格診断は以下リンクから:
http://time.com/3936871/alice-in-wonderland-quiz/?fb_ref=Default


Thursday, 18 June 2015

母音のスペリングと発音(記号)の対応まとめ

ずっと作ろうと思っていた「母音のスペリングと発音(記号)のまとめ」が完成しました!日本語の母音イメージを出発点に、できるだけ基本語彙で発音イメージがすぐに頭に浮かびやすいようにしてあります。
以下のURLより無料シェアしますので、学習にご活用ください♪

https://drive.google.com/file/d/0B5MDmjNM2FjzenVpYVRKYTg4VHc/view?usp=sharing


Saturday, 13 June 2015

TOEICにちょっとだけ役立つかもしれない情報

厚切りジェイソンの役職が
Senior Vice President(上位副社長)
なんだそうな。

(動画 0:29あたり)


TOEICでは何かと Vice Presidentが出てくるので、覚えておいて損はない。

Wednesday, 3 June 2015

Identity問題

堂々と「師」を名乗り「指導」しましょう

本物の英語教師 Hirohitoの生徒は、特に Skypeレッスンでは生徒の方が年上ということがまだまだ多い。
それでも、授業内=英語指導の場面においては当然こちらが「師」であり相手が「弟」である。その上下関係を打ち出していくことには何の抵抗も持っていないし、こちらから要求しなくとも、自然と「先生」と呼ばれる流れになる。
(その意味で、先生というのが単なる「先に生まれた存在」に過ぎないと捉えるのは間違いだし、教師としてはそのような存在に成り下がっていてはいけない。)

「師」とは「人を教え導く人」であり「技芸に通じた(専門の技術を持つ)人」。そういった identityを掲げ、その名に恥じない実力・パフォーマンスを見せてこそ、指導が成り立つ=生徒の実力を伸ばすことができる、と考えています。

こと、「教師・先生」という立場を自ら放棄するように、「友達と気軽におしゃべりする感覚で…」などと謳ったり、「英語(学習)コーチ・カウンセラー・コンサルタント・アドバイザー」等々というワケノワカラン肩書きを名乗り、「学習者と同じ目線で目標達成のために伴走します」と、もっともらしいことを言ったところで、本当の効果は得られないだろうな…とほぼ確信できます。

上記の立場は、生徒がもともと持っていた実力の上限まで引き出すことはできるかもしれない。しかし、その先の壁にぶつかった時、「(自分のいる場所・進んできた道)から引っ張り上げる」という視点がなければいけないのではないだろうか。

堂々と教師を名乗り、堂々と「上から目線」で、自分よりも学習段階として「下」の段階にいる生徒(そうでないのなら今すぐ廃業したほうが良い)を、少しでも自分の位置に近づけましょう。

■「教師」の身体感覚=アイドルと同じ

ステージに立つアイドルは、ファンに向かって「正対」します。最近は、アイドルとファンが直接触れ合う機会があったり、SNSを通じて間接的に直接やりとりができたり(←ややこしい)と、以前よりはアイドルといっても身近な存在として感じられるようになってきていますが、とはいえ「ステージ上の存在」であることには変わりなく、だからこそ人の心を動かし光り輝くことができるのです。

また、アイドルを目指す女の子にとっては、ステージ上で歌い踊るアイドルの姿こそが、最も大きな憧れの対象になっているのではないかと思います。

教師にとって、教壇はステージ

ステージ上で輝く姿を、生徒にも、将来教師を目指す後輩にも、存分に見せましょう。

☆Here is the Path to Wonderland★

「自分のレベルまで」引っ張り上げるつもりで指導しつつ、同時に「絶対に追いつかせない」というのが良いね♪


Friday, 3 April 2015

Lemonginaの違和感

Orangina(オランジーナ)は1936年からの歴史を持つフランスの国民的飲料…だ、そうです。
http://fr.wikipedia.org/wiki/Orangina

"-ina"という響きがなんとなくフランス語っぽくないように感じていたものの、とはいえ l'orangeという元々の単語から派生した商品名として、フランス人(正確にはフランス系アルジェリア人)が名づけたたものとして自然に受け止めることができる。

…が一方、新発売となった Lemongina(レモンジーナ)という商品名には、とてつもない違和感があった。調べてみると案の定、これは日本限定商品であるらしい:
http://www.orangina.jp/lemongina/

一応「オランジーナ社と共同開発」だそうですが、商品名は絶対に日本人が考えたんだろうな、ということが、発音を分析するとすぐに見えてくる。

■Gはどこから?問題

Oranginaの "g"は、当然 orangeのものである。よって、単語の成り立ちは "orange + -ina"となり、こちらは聞いて自然にorangeが想起できる。(ちなみに -inaという語尾は女性の名前を作るラテン語系接尾辞)

それに対し、Lemonginaでは "g"が完全に「身元不明」状態である。Ginaという女性名は存在するが、元々おさまりの良い単語に-ginaという語尾がいきなり押し入って単語を作りだすようなことはない。

Luigi + -ina = Luigina, George + -ina = Georgina, Rex + -ina = Regina
*Regina | rɪdʒiːnə |は | reksiːnə |から変化

というように、"g"は語幹に含まれているべき要素なのである。

■音節数の考え方

上で見たことを踏まえると、ネイティヴスピーカーであれば、「語幹 + -ina」のルールを適用して "Lemonina(レモニーナ)"と命名したのではないかと思われる。

オランジーナと並べた時に、レモニーナだと「リズムが合わない」と感じたならば、それはまさしく日本語の発想であり、これこそが「レモンジーナ」という商品名が日本人によってつけられたであろうと予測できる最大のポイント。

日本語の音節/モーラの数え方では、
オ・ラ・ン・ジ・ー・ナ
レ・モ・ン・ジ・ー・ナ
で共に6拍と数えるので、これはこれで日本語のリズムの合わせ方としては正しい。
*レ・モ・ニ・ー・ナは5拍である、念のため。

しかし、ヨーロッパ諸言語の音節数の数え方としては、
Or-an-gi-na
Le-mo-ni-na
となるので、両者ともに4音節語でリズムが揃っている

☆Here is the Path to Wonderland★

現状では「日本限定」で日本人を(主な)対象として販売している商品ではあるが、どうも外国語が「ことば」として扱われずに、雰囲気や響きで(言ってみれば「ノリで」)軽々しく使われている感が否めないように思う。

「フランス発祥!」といったイメージで売り出すのであれば、ネイティヴが聞いて違和感を覚えることのない商品名の方が好ましいんじゃないかなぁ…?

なお、今日買って飲みましたけどね(-ω-)v



Wednesday, 11 March 2015

資格試験考

英検1級に合格しました。


実を言うと、昨年(2013年度第3回)受験時には一次試験で1点差で不合格になり、一年越しで雪辱を果たした形。

※ちなみに1級の受験歴
2010年度第3回:不合格A(一次試験で9点不足)
2013年度第3回:不合格A(一次試験で1点不足)
2014年度第3回:合格(一次試験 85/113点・二次試験 81/100点)

資格試験の精度

もちろん、去年の1点差というのは悔しい結果で、そこで合格できれば良かったわけだが、このように3回受験して思うのは、資格試験が受験時の実力を測る精度というものが「予想以上に正確」だということ。

2010年度に受験した時は TOEICのスコアも925点しかなく、まぁ勝負はできると踏んで臨んだものの、今思えば「9点分の実力の開き」はあったように感じる。

去年は「まさにボーダーライン上の実力」だったわけで、運が良ければ合格できた可能性もあたかもしれないが、逆に1点差落ちというのも起こり得る結果だったと言える。

それで迎えた今回、はっきり言って一次試験が終わった時は、去年よりも自信が持てなかった。(実際、今回の一次の問題は難易度が高めだった。)
他方で、この一年で自分の英語力そのものは確実に上がっているという自負はあった。そして蓋を開けてみれば無事合格できたわけで、やはり「ある一定以上の実力を身につければ合格できる」というのが真理なのであろう。

「お得意様」になってしまっているのは

このように考えると、英検1級に限らず資格試験全般において、1年以上のスパンに渡り、何度も何度も受験しているのに合格できない・目標点を達成できない…という「◯◯協会のお得意様」になってしまっている状態は問題があると言えよう。(長い期間がかかった場合でも、「着実に合格点に近づいていき、最終的に結果を残せた」というのであれば問題はない。)

このような学習者は、はっきり言って
実力不足 and/or 伸びていない
のである。

本人からすれば、時間もお金も労力もかけて「頑張っている」のに…という意識になるとは思うのだが、結果の出ない努力は無駄にしかならない
「頑張っている自分」に酔いしれて、問題集やノートの数を自慢したところで、試験においては結果が全てである。

☆Here is the Path to Wonderland★

結果を出したい人は、結果を出した人に道を訊け。


Thursday, 26 February 2015

こんなレッスンは初めてなので、息子にとっても新鮮な内容だったようです:「本物の中学英語」モニター受講生の口コミ

先日、「本物の中学英語」に、春から中学生になるという男の子の受講がありました。
以下の受講体験モニターブログで紹介されていますので、ぜひご覧ください:
http://ameblo.jp/halfkhalfj/entry-11988554931.html

プロフィールにあった、『英語の誤解に汚染される前に、正しい英語の発音法・考え方・学習法を...』と言うフレーズに強く惹かれ、今回モニターーレッスンに選びました。
私自身、中学校での英語の授業内容に違和感を感じていますので、それとはまったく違う、英語へのアプローチの仕方を体験できるのではないか...と考えたわけです。

2本の棒で音を出して、リズムを打ちながら、強く読む部分と弱く読む部分をどうやって見つけて、発音を分けるのか、詳しく練習しました。
こんなレッスンは初めてなので、息子にとっても新鮮な内容だったようです。今日のたった一回のレッスンで大きな変化があるわけではありませんが、英語へのひとつのアプローチの仕方としてこんな方法もあるんだという、貴重な体験になったと思います。(後半の太字・ハイライトはHirohitoによる)

例えば、「英語のリズムが大事ですよ」というときに、どれだけ実感を与えられ、レッスン外の英語学習においても「あっ、これ Hirohito先生が言っていた通りだ!」と思える瞬間を増やしていくか、ということは常に考えている。

「2本の棒」というのは、あたしの場合はレッスン用のプラスチック箸なのだが、ペンや鉛筆があれば良いし、本質的には手拍子でも構わない。大事なことは、特別なものを用意しなくても、日常でほんの少し意識を向けるだけで、学習の量と質は格段に変わるのだということ。

☆Here is the Path to Wonderland★
他では受けられないレッスンを重ねるごとに日常の英語学習の効果自体が加速していく体験ぜひ、体験してみてほしい。


Thursday, 22 January 2015

Rのひとつ覚え

■「Rのひとつ覚え」問題

日本語ネイティヴの英語学習者にとって、Rの発音・RとLの区別が重要であることは間違いない。
しかし、**のひとつ覚えのようにRを見たら舌を巻き、綴りのRがあったら味噌**一緒に注意するというのは間違い。
どうもこの「Rのひとつ覚え」とでも呼ぶべき、何かRの発音(っぽく)さえやっていれば「英語の発音が小慣れて(?)いる」という誤解が根深いように感じる。

■ 母音の「前」のRが大事

まず、母音ののR(例:far, more, wordなど)はイギリス発音ではオプショナル。もちろん、舌の丸めは「伴っても良い」わけだが、母音ののR(つまりカタカナで言うと「ラリルレロ」になる箇所:right, friend, spring, centuryなど)で向けるべき注意と比べ、優先順位は格段に低い。

 「アー」の区別

また、これは母音の区別も関わってくる話だが、「Rのひとつ覚え」な人の多くは、口を大きく開く"ar"と、あいまい母音を伸ばす(=口の開きは狭い)"er, ir, ur, ear"も区別されていないことが多い。

ここでの区別においては、はっきり言ってRの音を響かせるかどうかなんてどうでもいい。(上で見たとおり、母音の後のRなので、あくまでオプションにすぎない。)

それよりも「口の開き加減の違い」が重要。
特に、Rっぽく発音することばかりにこだわっている人は、本来「大あくびをするとき・医者に喉を診てもらうとき」のように口を大きく開けるべき"ar [ɑːr]" の所で、口を開かずに"er, ir, ur, ear"の綴りの時の発音 [əːr]になっていることが多い。

その結果、star(星)が stir(かき混ぜる)に、far(遠い)が fur(毛皮)に、part(部分)が pert(生意気な)に聞こえてしまう。※特にpertは offensiveな表現に捉えられることもあるので要注意。

☆Here is the Path to Wonderland★

「何でもかんでもRの音を響かせれば英語っぽい」というのは、バカのひとつ覚えに過ぎない。正しいところで正しいRを発音できるのが本物の発音力であり英語力である。