雲間を抜けて、着陸までの15分は宝物の時間だった。
安井泉先生が『ことばから見る英国文化論』の中で、ロンドン行きの飛行機は左の窓側を勧められていたので、座席指定をしておいたのが大正解。おとぎ話に出てくるようなお家が、道路に沿って整然と並んだ美しい街並みを存分に堪能することができた。
もっとも「左の」というのは、安井先生が上の研究報告書を書かれた当時にヒースロー空港の上空を左旋回して着陸をしていた事情があってのことなので、現在は左右どちらでも構わないかもしれない。それでも、ロンドンに向かう時の飛行機の座席は窓側をぜひ勧めたい。
思うに、旅先に向かう交通機関の窓から、目的地が近づいてくるに連れて見えてくる景色は、物語の prologueであろう。
例えば羽田空港であれば、まさに大都会 Tokyoの忙しさの中に降り立っていくような気になるし、ホノルル空港着陸前はいかにも「南海に浮かぶ楽園の島」が少しずつ姿を現していくようであった。
シドニーでは Sydney Opera Houseと Sydney Harbour Bridgeによる出迎えがあり、森と湖の国フィンランドのヘルシンキは、まさに森の中へと降りていくようであった。
その意味では、今回のヒースロー空港着陸前のひとときは、まさに「不思議の国」への旅の始まり。1982年7月4日の輝く昼下がり、Lewis Carrolがリデル家の三姉妹(Aliceは次女)とともにボートで漕ぎ登ったテムズ川の、高低差のない平地を流れる静かな水面を見下ろしながらたどり着いたロンドン。
これから紡ぎ出される物語に思いを馳せて…
★Here is the Path to Wonderland☆
prologue | ˈprəʊlɒɡ |
最初の音節に強勢が置かれることに注意!(×
pro-(前の)+ -logos(話)→「開幕前の話」
log(o) / logueを含む単語はギリシャ語の logosを語源とし、「ことば」に関わる意味を持つ。
例:logo(ロゴ), logical(論理的な), dialogue(対話), ideology(イデオロギー・観念形態)